Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
21世紀になり新たに提唱された人間の利他性は外集団に対する攻撃性と不可分であるとする「偏狭な利他主義仮説」は、集団内での利他行動と外集団に対する攻撃という二つの行動は共進化したと主張する。もしこの仮説が正しいのであれば、人間の利他性を引き出すような政策は、必然的に外集団に対する攻撃行動をも促進してしまうことになるため、この仮説の妥当性を検証することは、学問的意義も実社会に与える影響も極めて大きい。そこで本研究では、新たな実験ゲームを開発し、偏狭な利他主義仮説を世界ではじめて、大規模な実験室実験により厳密に検証する。
人類が極めて高い利他性を備える種であることは、衆目の一致するところである。このような「協力する種」が出現したことを説明する有力な仮説の1つに偏狭な利他性仮説がある(e.g., Bowles and Gintis, 2011)。利他性を備えることは、各個人にとっては自分の利得を減少させて相手の利得を増大させることを意味するため、非適応的であり、そのままでは進化しない。しかし、人類の歴史においては頻繁に集団間で戦争が生じており、戦争においては自集団に対する利他性はその勝利確率を高めるため、極めて有利な形質である。そのため、自集団に対する利他性と他集団に対する攻撃性が共進化したというのが、偏狭な利他性仮説の骨子である。この仮説は、モデル研究により提唱されたが、直接的な実証的検討は未だなされてはいない。そこで本研究では、自集団に対する利他性と他集団に対する攻撃性の関係を明らかにすることを目的とした、大規模な実験室実験を行った。Covid-19の影響は甚大であったが、2023年度にはついに実験を行うことができた。まず第1フェイズとして、実験参加者プールに登録している人々に二人の画家の絵画に対する好みを答えてもらい、それに応じて2つの集団に分類した(187名)。次に、第2・3フェイズとして実験室実験を1回ずつ行った。一方の実験では参加者は自集団に対して協力するかどうかを決定し、もう一方の実験では参加者は他集団を攻撃するかどうかを決定した。これら2つの実験の順序はカウンターバランスをとった。参加者を集めるために手は尽くしたが、ドロップアウト率が予想以上に高く、最終的に第3フェイズまで全て終了した参加者は46名しかいなかった。よって、残念ながら偏狭な利他性仮説を検証するには不十分過ぎる結果となった。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2023 2022
All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results, Open Access: 1 results)
心理学評論
Volume: 65 Pages: 135-149
JAPANESE PSYCHOLOGICAL REVIEW
Volume: 65 Issue: 2 Pages: 135-149
10.24602/sjpr.65.2_135