Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本研究は、「出ユーラシア」後にアンデス山村で育まれた「景観」による信仰体系やコスモロジーに基づいて、現地住民の開発実践に対する感情の濃淡をマッピングすることで、今日的な環境開発の実践を社会的文脈に即して再考するものである。本研究では、ペルー北部カハマルカ県山村の環境開発に対して「反発」と「融通」のあいだで揺れ動く感情的な濃淡を、景観に対する信仰実践と民話、環境利用に着目してマッピングすることで、当事者の実践や関係、問題系が矛盾をはらみつつもミクロに調整されていくプロセスを明らかにする。
本研究は、科学研究費の新学術領域「出ユーラシア」の2020年度公募研究に採択された研究である。本研究では、南米ペルー北部山村における「水」をめぐるグローバルな開発実践と、現地の民話に基づくコスモロジーにまつわるローカルな実践とのコンフリクトを調整する方途を探っている。特に、現地住民のなかには、民話やコスモロジーが宿る景観を禁忌と捉えている者もあり、そうした景観という視点から、近代的な開発と現地住民の世界観との対立・折衝・調整過程を研究している。また、理論としては、景観人類学のヤノフスキとインゴルドの論集(Janowski and Ingold 2012)を援用している。彼らはその論文の中で、イマジネーションとは、人間もランドスケープの一部であることを認めると、人間が環境に対して投影する想像力である一方で、環境が人間に対してアフォードする以上の情報があり、幻想とまではいえない両者の中間的な知覚であるという。そのため、現地住民が特定の世界観をもって、自然景観を眺める実践に注目している。2022年8~9月に現地でフィールド調査を行い、自然景観に民話やコスモロジーが宿る特定の地域でのインタビュー調査と、鉱山の影響で汚染している川周辺の住民に聞き取り調査を行った。特に、特定の自然景観には「よくな時間帯(Mala Hora)」という行動認識がある。「よくない時間帯」とは、夕方5時から明け方4時にかけてであり、住民は物理的なアクシデントへに加え、精神的存在への対処も必要になる。そうしたMala Horaに対する体験談も10話近く入手した。本研究は発展的な学際的研究の基盤研究であるため、「出ユーラシア」参加メンバーであるB01班の河合洋尚氏とA01班のアンデス考古学者である松本雄一氏、山本睦氏と、景観考古学/人類学研究会を重ね、「景観」をめぐる成果(論集)を出版する予定である。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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文化人類学
Volume: 87-4
https://researchmap.jp/7000029386