Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
強誘電に極めて近いとされる量子常誘電性、異方的な3d電子軌道の選択性を持つチタン酸ストロンチウム(SrTiO3) の2 次元伝導面では、低キャリア領域で発現する超伝導状態にネマティックと呼ばれる一軸性、およびこれに由来した新規な量子臨界現象が現れることが期待される。本研究では、SrTiO3の電場誘起伝導表面における電気抵抗の温度・磁場・面内磁場方位依存性を詳細に調べることにより、この特徴的な2次元電子系でのネマティック超伝導出現の可能性を検証し、その発現条件および特徴・独自性を明らかにする。
本研究の目的は、SrTiO3電気二重層トランジスタにおいて発現すると予測される、強誘電性や多軌道性を起源とした新規ネマティック超伝導の可能性を検証し、その発現条件および特徴・独自性を明らかにすることである。2020年度において、この系には70Kと30K付近に金属と共存した特徴的な強誘電存状態への転移が起こり、0.4K以下の極低温下での超伝導状態と共存していることを見出した。2021年度はこれら共存状態の特徴・独自性を見出すことに成功した。常伝導状態では非相反抵抗(非線形項)の磁場および磁場方位依存性を新規導入したロックインアンプと既設のベクトルマグネットを用いて測定することにより、70Kでの転移は、試料中の電場によって誘起された、金属と強誘電絶縁体の相分離によって引き起こされること、30Kでの転移は金属相の自発的な面内分極の発生による強誘電転移であることを実験的に証明した。開始当初、この系の分極方向は試料にかかる電場と同じ面直方向と予測さたが、これが面内方向に秩序化することは、予想外の発見であった。0.4K以下の超伝導状態では、超伝導転移領域での電気抵抗の面内磁場方位依存性に特徴的な2回振動(ネマティック性)を観測した。特に30Kでの強誘電転移が明瞭に観測される低キャリア密度領域では、抵抗の極小が結晶の[100]方向に対して45度ずれた[110]方向に現れた。30K以下で発生する面自発分極が同方向を向いていると予測されることから、このネマティック超伝導は強誘電分極を起源とした新規なものであることが明らかとなった。強誘電転移が観測されにくくなる高キャリア密度領域では2回振動の極小値は[110]からずれた角度で観測され、こちらはSrTiO3の多軌道性を起源としたものと結論した。以上の成果により、当初の目的はほぼ達成されたと言える。現在、結果をまとめた論文を執筆中である。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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All Presentation (8 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)