Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
冬季における寒気の吹き出しは、冬半球の中高緯度で最も活発な気象現象の1つであり、活発な大気海洋相互作用を引き起こす。黒潮・黒潮続流域への寒気の吹き出しは海面の冷却と同時に、海洋側では亜熱帯モード水の形成、大気側では加熱による寒気の消滅を発生させるが、これら3者の関係の定量的な理解は十分でなかった。本研究課題は、黒潮・黒潮続流上の寒気の吹き出しに伴う大気海洋相互作用を包括的に理解することを目指す。特に、①黒潮・黒潮続流上での寒気消滅に寄与する物理プロセスの解明、②海洋の微細構造が気団変質に与える影響の解明、③寒気消滅の量・分布と亜熱帯モード水形成の関係の定量的な解明、の3つを目的とする。
2021年度は,黒潮・黒潮続流上での寒気消滅に寄与する物理プロセスと,海洋の微細構造が大気に与える影響の2項目を調査した.寒気消滅に寄与する物理プロセスについては,気象庁の作成したJRA-55大気再解析データセットの気温変化率データを用いることで,冬季北半球の中高緯度に存在する寒気の長波放射,短波放射,乱流,水物質の相変化に伴う生成率と消滅率の気候学的分布を示した.寒気は長波放射と陸上・海氷上での乱流により生成されることが分かった.後者は放射冷却によって冷却された海面からの熱輸送を表すことから,広く放射冷却が寒気を生成する.一方,寒気の消滅率のうち55%が海洋上での乱流,35%が水の相変化に由来していた.後者は冷たく乾いた寒気へ潜熱の供給とよく対応しており,生成された寒気の約90%が海面の冷却と関係していることが明らかになった.この成果を,2021年度の日本気象学会秋季大会と2021年のAGU fall meetingで発表した.海洋の微細構造が大気に与える影響については,気象庁の作成したJRA-55C大気再解析データと,同仕様ながら高解像度の海面水温データを下部境界条件として使用したJRA-55CHS大気再解析データにおける日本付近の冬季の降水量の比較を行った.比較の結果,冬季の降水量が多い地域の北側に位置する新潟県から北海道にかけての日本海側で2つのデータセットの差が大きかった.これは,高解像度の海面水温データでは,日本海を南から北へ流れる対馬暖流の微細構造を再現できているためと考えられる.冬型の気圧配置や低気圧通過時に2つのデータセットにおける降水量の差は大きく,特定の気象場の時に海面水温の影響が表れることが明らかになった.
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2022 2021 2020
All Journal Article (3 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Peer Reviewed: 3 results, Open Access: 3 results) Presentation (6 results) (of which Int'l Joint Research: 3 results)
SOLA
Volume: 18 Issue: 0 Pages: 1-7
10.2151/sola.2022-001
130008145822
Journal of Geophysical Research: Atmospheres
Volume: 127 Issue: 7
10.1029/2021jd036380
Journal of Climate
Volume: 34 Issue: 1 Pages: 157-170
10.1175/jcli-d-20-0552.1