Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本研究では、近年利用可能になった過去約70年に及ぶ高解像度大気再解析データと、1950年から2050年までの高解像度モデルによる現在気候再現・将来気候予測実験データを用いて、特に中緯度大気海洋変動の影響を強く受けると考えられる台風温低化についての経年変動を100年スケールで提示する。このために、①温低化する台風の個数・割合とそれらの経年変化、②温低化の開始・終了位置とそれらの経年変化、③温低化中の台風の構造の経年変化、④①-③の海面水温勾配や海洋前線、ジェット気流の軸などといった大気海洋環境場との位置関係とそれらの経年変化、⑤モデルや解像度の違いにより①-④に違いが見られるかを明らかにする。
英国気象局の研究者と連携し、大容量ファイルサーバーにHighResMIPモデルのデータを取得した。このうち、56,28,14km格子の全球非静力学モデルNICAMによる1950-2050のシミュレーションデータを用いて昨年度と同様の台風温低化に関する解析を行った。その結果以下の点が明らかになった。(1)NICAMでは解像度が低いほど台風の発生数が多い。(2)どの解像度であっても気象庁ベストトラックデータによる解析と同様に台風発生数の減少トレンドが見られる。(3)56kmモデルでは温低化する台風の個数がほとんど変化しておらず、結果として温低化する台風の割合が増加傾向にある一方で、28km、14km解像度のモデルでは温低化する台風の発生個数が減少傾向であり、全体風発生数に対する割合としても減少傾向である。(4)モデルの解像度が低いほど、大気再解析データと比べて南で温低化が開始しており、モデルの解像度が高いほど、北で温低化が完了している。(5)温低化開始終了緯度は年とともに北上する傾向がある。(6)温低化開始位置での合成図解析によると、現在気候では海面水温26℃が温低化開始の目安であったが、将来気候では海面水温27-8℃に上昇していた一方で、対流圏の上層と下層の風速差(鉛直シアー)については現在気候、将来気候ともに20m/sが温低化開始の目安であった。(7)温低化開始・終了時点での台風の構造に現在気候と将来気候とでは明瞭な差は見られなかった。以上のように、台風温低化について、モデルの現在気候再現性能と現在から将来にわたってのトレンドについての知見を得ることができた。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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