Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
半導体検出器と比べ1000倍以上もの高感度が期待できるだけでなく大規模アレイ化にも適した超伝導検出器(Kinetic Inductance Detector: KID)の冷却コストを抑制しつつ高感度を維持するために、超伝導エアブリッジ構造で構成される新しい構造の検出器を開発する。エアブリッジ構造を採用することで、検出器内部でのエネルギー保持時間を長くなり動作温度をあげても検出器性能を維持できると考えている。実現すれば検出器動作温度を従来の0.1 Kから1 K程度まで高めることができるため、同じコストで少なくとも数倍から10倍程度大きい検出面積の検出器を実現できる。
本研究課題は冷却コストのかかる超伝導検出器の動作温度を上げつつ高い感度を犠牲にしない手法としてエアブリッジ構造を検出器に導入し,その効果の検証を行うとともに,検出器性能を制限している超伝導内部の物理現象の解明も目標としている.本年度は,昨年度世界で初めて動作を実証したエアブリッジを組み込んだ力学インダクタンス検出器の性能向上を目標として,検出器のインダクタンス部分におけるエアブリッジ比率を0.5%から30%まで高めた構造でデバイス作製を行った.デバイスはシリコン基板上に100 nm厚のニオブを用いて作成し,強度を確保するためにエアブリッジ部分のみニオブの厚さを500 nmとした.作製した素子はアルファ線源とともに1K冷凍機内部に設置することで,5.45 MeVのアルファ線信号を検出した.信号解析の結果,アルファ線がエアブリッジ部分と通常のインダクタンス部分のどちらに当たったかを分別ができた.さらにエアブリッジ部分で検出すると他のインダクタンス部分による信号と比べて,最大で15%程度のエネルギー分解能向上が見られた.これは,エアブリッジ部分は基板と接しているのがブリッジの両端に限定されるため,超伝導ニオブ内部で励起された準粒子と基板中のフォノンの相互作用が抑制され準粒子寿命の延長に成功した可能性を示唆している.現状はブリッジの長さが20um程度しかなく,50umを超えると歩留まりが著しく低下するため,ニオブの体積条件の見直しなどによって100umを超えるようなブリッジ作製が望まれる.以上のように,エアブリッジ構造導入による分解能向上とデバイス内部での物理現象を理解する手がかりを得た.
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2021 2020
All Presentation (5 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Invited: 3 results)