Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本研究は、生物時計のプロトタイプとして重要な、シアノバクテリア由来のタンパク質KaiA,KaiB, KaiCからなるin vitro系(KaiABC系)の概日振動において、そのリズムを生み出す熱力学的な仕組みを解明することを目指す。これまでの小分子からなる反応系の解析とは異なり、タンパク質における個々の分子振動と集団振動の関係を明らかにする新しい情報物理学のアプローチを構築する。このため、申請者がこれまで開発した多重フィードバックモデルをもとに、生物物理と統計物理という二分野に渡って現象と理論の橋渡しをする研究を展開する。
本研究の目的は、タンパク質の概日リズム振動におけるATP加水分解反応の役割を解明し、生物リズムという“情報秩序”を生み出す熱力学的な仕組みを明らかにすることにある。このため、次の2つを目標とする。(1)KaiC分子の振動位相の分子ペア間相関に関する相互情報量を含むように、熱力学不確定性関係を拡張する可能性を探る。(2)生化学、構造生物学による実験データとの比較により、モデルの妥当性について検証を深める。情報物理学の新しい展望を開くとともに、実験グループと連絡をとりながら振動系の分析を行い、個別分子と分子集団という異なる階層の理解を統合して、多分子間のコミュニケーションにおけるATP反応の役割を解明する。本年度は、昨年度までに開発した多重フィードバックモデルをさらに発展させ、多数のKaiC分子における振動位相分布を計算するとともに、KaiC変異体における振動周期の目覚ましい変化を分析して、その機構を明らかにした。さらに、KaiC分子振動のもうひとつの顕著な性質として、温度変化による振動周期の変動が小さいこと(温度補償性)が知られているが、変異による著しい振動周期変化と温度補償性がともに、KaiC分子における構造と反応の多重フィードバック機構によって整合的に説明できることを理論的に示した。こうして改良したモデルをもとに、ATP加水分解が振動周期と分子間のコミュニケーションによる振動位相同期に与える影響について理論的に分析し、実験グループとの情報交換を行った。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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All Int'l Joint Research (1 results) Journal Article (3 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Open Access: 2 results, Peer Reviewed: 2 results) Presentation (6 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Invited: 2 results) Book (1 results)
bioRxiv
Volume: 該当無し Pages: 1-19
10.1101/2021.10.11.464015
Scientific Reports
Volume: 11 Issue: 1 Pages: 1-12
10.1038/s41598-021-84008-z
Physical Review E
Volume: 102 Issue: 4 Pages: 1-9
10.1103/physreve.102.042408