Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本研究では、未分化なES細胞がどのようにして分化状態へと遷移していくのかを、情報数理学的解析によって解析する。方法としては、分化刺激を与えれば100%の細胞が分化する野生型ES細胞と、分化刺激を与えても未分化状態の細胞が出現し続ける変異型ES細胞の振る舞いをライブセルイメージングによって定量・比較し、数理モデルを構築することで、正常のES細胞がどのように未分化状態から分化状態へと遷移していくのかを理解する。本研究で対象としている遺伝子変異は多くの癌でも認められるため、得られた知見は癌の抗癌剤に対する抵抗性獲得のメカニズムなど、癌の理解に繋がる可能性がある。
本研究では、未分化なES細胞がどのようにして分化状態へと遷移していくのかを、情報数理学的に解析することを目指した。この目的を達成するために、分化刺激を与えれば100%の細胞が分化する野生型ES細胞と、分化刺激を与えても未分化状態の細胞が出現し続ける変異型ES細胞に対して、以下の2つの手法を適用した。(1) 分化誘導前と分化誘導後の 1細胞RNA-seqを行い、背後にある遺伝子制御ネットワークと、そのネットワークにおける鍵となる遺伝子(転写因子)を同定する。(2) (1) で同定した鍵となる遺伝子の振る舞いをライブセルイメージングによって定量・比較し、数理モデルを構築することで、正常のES細胞がどのように未分化状態から分化状態へと遷移していくのかを理解する。令和3年度は、遺伝子発現制御ネットワークの同定を目指し、1細胞RNA-seqを行い、分化誘導時に変異型ES細胞でのみ特異的に出現する細胞集団を同定し、Trajectory解析を行うことによって、変異体がその細胞集団へと遷移する際に鍵となる遺伝子(転写因子)を同定した。現在はその遺伝子へ蛍光タンパクをノックインし、ライブセルイメージングを行うための条件検討を行っている。今後はこの遺伝子の発現変動を定量し、数理モデルを構築することを目指す。本研究では、先進ゲノム支援よりMicro-C解析のご支援もいただくことができた。よって、上記(1) (2) の方法に加え、(3) 野生型ES細胞と変異型ES細胞について、それぞれ分化誘導前と分化誘導後のMicro-C解析を行い、(1) の1細胞RNA-seqのデータと統合しながら、変異型ES細胞がこのような類い稀なる表現型を呈する基盤となるゲノム三次元構造を同定することを試みることとした。現在は(1) (2) (3)の各データの統合解析を試みている。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。