Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
キネシンは、二つの足(頭部)を交互に動かしてレールの上を歩くようにして移動しながら、細胞内での物質輸送に関わっている。一分子計測法によって運動の様子が明らかにされてきたが、物理学の理論を元にその仕組みを説明するまでには至っていない。本研究では、一分子計測法の時間分解能を向上させて頭部の揺らぎやステップと足踏みの頻度を定量的に求めることによって、情報熱力学的な観点からキネシンの運動の仕組みを明らかにすることを目指す。
本研究は、細胞内での物質輸送に関わる分子モーターキネシンが、ATP加水分解によって得られた化学エネルギーを一方向性の運動に変換する仕組みを情報熱力学的な観点から明らかにすることを目標とする。キネシン頭部を金微粒子で標識してその動きを高速暗視野顕微鏡を用いてマイクロ秒の時間分解能で観察することにより、解離した頭部のブラウン運動や、頭部が前方または同じ結合部位に再結合する様子を定量的に計測する。本年度は、この高速一分子計測法を負荷存在下で運動中のキネシンに適用することによって、負荷が頭部のブラウン運動や前後への結合頻度に与える影響を明らかにすることにした。まず、DNAオリガミでできたナノスプリングの片端に野生型キネシン、もう一方の端に変異体キネシンを取り付け、金コロイド標識したキネシン頭部の運動を高速暗視野顕微鏡法を用いて観察した。当初は変異体キネシンによってDNAナノスプリングの片端を微小管上に固定して、もう片端の野生型キネシンによるナノスプリングの伸び縮みを観察する予定であったが、変異体キネシンが頻繁に解離してしまい、さまざまな改善策を試してもそれを防ぐことができなかった。そこで、直接負荷を計測するのではなく、野生型キネシンの速度が負荷によって変化することを指標として、負荷の見積もりを行うことにした。いくつかの速度(負荷)領域に分けてキネシンの運動を比較したところ、負荷が増加するにつれて、浮いた頭部が前方の結合部位に結合するまでの時間が増加し、浮いた頭部が後ろの結合部位に再結合する頻度が上昇した。また、浮いた頭部のブラウン運動を解析したところ、負荷の増加に応じてブラウン運動の分布が後方に偏ることが示された。これらの結果は、負荷によって浮いた頭部のブラウン運動が後ろに制限されることが、キネシンの負荷による速度低下の原因であることを裏付けるものである。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2021 2020
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Physical Review Letters
Volume: 127 Issue: 17 Pages: 178101-178101
10.1103/physrevlett.127.178101