Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
金属などの微細な構造による、光波の伝搬と局在の制御に関する設計論を一般化するための考察を昨年度に引き続き行った。現象の解釈に重要な要素として2つを挙げた。第1はエネルギーの流れに注目する場合、その担い手が電子か光かという担体の区別よりも、それが共鳴体として振舞うか伝搬波として振舞うかという状態の区別のほうが重要そうであるということ(共鳴子-伝搬子描像;光近接場は共鳴子に分類される)。第2は、従来は波動の振る舞いに注目し、共鳴子の影響を伝播子に繰り込む形で整理されてきたが、ナノ構造の近傍のように近接場が主役となる場面では共鳴子に伝搬子の効果を繰り込むことが重要そうであることである。そもそも物質の光学応答を表す誘電率自体が、物質内部に電磁場のエネルギーを閉じ込める効率を表すのだが、多くの場合これを電磁波の伝搬速度に関する量として扱う。これを、伝搬速度、あるいは物質の存在による伝搬時の位相遅れと、そこに局在する担体によるエネルギーの閉じ込め効率の関係であると捉えることは重要である。それにより、系が誘電率によるエネルギー閉じ込め・屈折・散乱(反射)を示す場合のみならず、物質の界面を利用した構造共鳴によるエネルギー閉じ込めを示す場合も、波の干渉現象として等価に扱うことを容易にする。このような扱いは、具体的な構造形状による電磁場の散乱や分布の解析といったミクロな立場からの解析と対をなし、マクロなエネルギー収支についての考察の基本となることを示した。伝搬波と近接場(だったもの)は、構造の界面を介して互いに総量を保存したまま組み換えを行うことのみが可能であり、結果として伝搬するものにつながった部分がいわゆる増強場であるから、エネルギー局在を得するためには積極的にその収支を損する箇所を用意する必要があり、すなわち相互作用の弱い場所を作ることが重要である。
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Phys.Rev.Lett.
Volume: 106
Phys.Rev.B 81