Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
N,N'-ジアルキルイミダゾリウムイオンは、正電荷が5員環に非局在化した特異なカチオン構造を有する。このような、フォトクロミック分子のアリールユニットとしてイミダゾリウムを導入したジアリールエテンおよびターアリーレンは、フォトクロミック反応に伴う正電荷の局在化制御により、種々のスイッチング特性を発現することが期待される。一方、ヘキサトリエン-シクロヘキサジエン系のフォトクロミック反応(光電子環状反応)は、特定のコンフォメーションからのみ進行することが知られている。3つのヘテロ芳香族により構成されるターアリーレンにおいては、多様な分子間相互作用が期待され、そのような分子間相互作用を利用した特定コンフォメーションへの分子フォールディングならびに高感度フォトクロミック反応系の設計が可能である。分子内において、CH/N相互作用ならびにS/N相互作用により分子のフォールディングを固定した新規ジチアゾリルベンゾチオフェンを設計した。結晶構造より、フォトクロミック分子が光反応活性なコンフォメーションに固定されており、上記の相互作用が協調的に分子フォールディングに寄与していることが明らかとなった。以上の分子内相互作用は、溶液中においても^1H-NMR測定から確認され、反応活性型のコンフォメーションが優先的に形成されていることが示唆された。フォトクロミック反応特性を閉環反応量子収率測定により評価したところ、0.98±0.02とほぼ100%の効率で光閉環反応を示すことを見出した。以上より、適切に分子内相互作用を設計することにより高い反応効率を示すフォトクロミック分子システムを構築できることを明らかにした。
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