Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
タンパク質のダイナミクスの研究では、アミノ酸の数と同程度の膨大な自由度を考慮するのが一般的である。しかし、最近の1分子実験や分子シミュレーションの結果を統合すると、少なくともモータータンパク質など比較的大きな構造変化をするタンパク質は、その大域的で遅いダイナミグスは高々2~3程度の自由度で粗視化できることが分かってきた。このような実験結果を踏まえて、タンパク質のダイナミクスを低次元のLangevin系でモデル化する試みがされている。しかしタンパク質1分子の動きは直接観察出来ない。リンカーを介して結合されたプローブ粒子の動きから、タンパク質の動きや粗視化モデルの物性パラメータを推定する枠組みが必要となる。この問題に対してベイズ推定の枠組みで取り組み、隠れた自由度を持つ微小系に対するパラメータ推定法を構築し、Langevinモデルで数値実験を行いその有効性を確認した。一方で内部自由度の緩和時間よりもプローブの緩和時間が長くなるとき、推定結果が急激に不安定になる一種の相転移を初めて見出した。パラメータ推定が容易な領域では、観測時間に比例して推定誤差が減少していくことが確かめられ、我々の理論と一致する結果を得た。パラメータ推定では一般に、モデルパラメータが決まれば、経路確率の隠れた自由度に関する最大化で、隠れた自由度の最尤軌道も求めることができる。しかし、準安定状態が多数あるポテンシャルを含むLangevin系の場合、通常の緩和法では最尤軌道の計算コストが膨大になる。そこで、摂動展開を用いて最尤軌道の近似解を逐次的に構成する手法を考案した(往復法)。1分子実験の粗視化モデルで数値実験を行い、緩和法に比べて3桁以上速く解が収束することを確認した。さらに、初期条件と境界条件の選択によらず、ほぼ一意で適切な解が得られることを示した。
All 2011 2010 2009
All Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 3 results) Presentation (9 results)
J.Chem.Phys.
Volume: 134
120003072124
Phys.Rev.Lett.
Volume: 105