Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
花序茎頂の発生と維持に主要な機能を持つTERMINAL FLOWER 1(TFL1)遺伝子は、LFY、AP1との間で複雑な相互調節関係を示すが、TFL1自身の作用機構については、TFL1が転写制御に関与するかどうかも含めて、,これまで明らかにされていなかった。一方、TFL1のホモログであるFTは、花成の統合因子として、bZIP転写因子FDと複合体を形成し、AP1などのメリステムアイデンティティ遺伝子の転写活性化に関与することが示されている。本研究ではTFL1もFTと同様に転写制御に関与しているという仮説を検証すると共に、TFL1が関与する転写制御ネットワークを明らかにする。TFL1が転写制御に関与しているかどうかを明らかにするには、転写因子に特徴的なドメインを融合させ、その機能を植物体内で調べるという方法が有効と考えられる。具体的には、TFL1タンパク質に転写活性化ドメインVP16または転写抑制ドメインSRDXを融合し、アラビドプシス体内で強制発現させた。その結果、TFL1-VP16はtfl1突然変異体様の表現型をもたらし、TFL1-SRDXはTFL1を単独で強制発現させた場合と同様の表現型を示した。この結果は、TFL1が転写制御複合体の構成要素であることを示すと同時に、本来の機能が転写抑制に関与していることを示唆している。次に、遺伝学的解析を進めたところ、TFL1-VP16によるドミナントネガティヴな表現型がfd突然変異体では抑圧されることが明らかとなった。また、タンパク質間相互作用を調べた結果、TFL1もFTと同じくFDタンパク質と相互作用することが明らかとなった。さらに、FTのターゲットとされる、AP1、SOC1、SEPなどの遺伝子発現を調べたところ、TFL1-SRDX植物では発現が抑制され、TFL1-VP16植物では発現が促進されることが示された。以上のことから、TFL1とFTは、FDを含む共通の転写複合体の構成要素であると結論づけられる。そして、その複合体にTFL1が含まれる場合は転写抑制に働き、FTが含まれる場合は活性化に働くと考えられる。
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