Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
本研究は、マウス初期胚から個々の胚細胞ごとにcDNAを増幅、精密度の高い遺伝子発現プロファイルを構築し、多能性細胞を生み出す初期発生のメカニズムを分子レベルで解明することを目指している。昨年度は、個々の胚細胞からのcDNA増幅および定量的PCRによる遺伝子発現解析をおこない、胚盤葉上層と初期内胚葉の2つの細胞系統がわかれ始める発生時期を胎生3.25日前後と特定した。当該年度は、さらに網羅的な遺伝子発現情報の収集と統計学的解析のため、得られたサンプルを用いてマイクロアレイ解析をおこなった。マイクロアレイデータの主成分分析では、胎生3,25日から胎生3.5,4.5日へと発生時間軸に沿って、非常に明瞭な2群への分化の方向性が認められ、定量的PCRで得られた知見を支持する結果が得られた。さらにアレイデータのクラスタリング解析から、新たな初期分化マーカーとなる複数の候補遺伝子を得た(e.g.Spp1, Fgf4, Cdyl2, Ppp1r3b, Lrp2)。この遺伝子群の中には、胚盤葉上層マーカーとしてFgf4も含まれており、最近の、マウス初期胚の単一胚細胞からの転写因子発現の解析報告との一致がみられた。いくつかの遺伝子については、定量的PCRによる遺伝子発現解析をおこない、マイクロアレイに含まれなかったサンプルからも分化マーカーとしての発現傾向が確認できた。今回見つかった最初期マーカー遺伝子には転写因子以外の分子も含まれていた。これは本研究の解析手法である単一細胞cDNA増幅技術が、大規模解析可能な汎用性をもつ故に明らかになった重要な知見といえる。
All 2010
All Presentation (2 results)