Budget Amount *help |
¥9,100,000 (Direct Cost: ¥7,000,000、Indirect Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2010: ¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2009: ¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
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Research Abstract |
近年,カゴ状結晶構造をもつ化合物において,特異な超伝導状態や多彩な多極子物性,カゴ中の原子のラットリング振動などの,磁性とフォノン物性が融合した現象が注目されている。本研究では,4f電子を2個もつPrイオンを含む立方晶化合物PrT_2Zn_<20>(T:遷移金属)の単結晶試料を作製し,超伝導や構造相転移,重い電子状態について明らかにしてきた。本年度は,PrT_2Zn_<20>の4f電子に起因する磁性の解明や新規単結晶の育成などの研究を行った。PrRu_2Zn_<20>は138Kで構造相転移を起こすが,PrIr_2Zn_<20>は構造相転移を起こさない。そのため,PrIr_2Zn_<20>は2K以下の低温まで立方対称を維持しており,縮重度の高い結晶場基底状態が期待される。そこで,単結晶を用いたマクロ物性測定を行った。比熱でみられるショットキー異常や磁化の異方性から,PrIr_2Zn_<20>の結晶場基底状態は非磁性のΓ_3二重項であることを確定した。さらに,0.11KでΓ_3二重項に起因する相転移を見出した。温度-磁場相図が異方的であり,また転移温度が磁場とともに上昇することから,この相転移は4f電子の電気四極子が交替的に空間整列する反強四極子秩序であることが分かった。PrIr_2Zn_<20>は0.05K以下で超伝導を示すので,四極子秩序と超伝導が共存するはじめての系である。四極子自由度と超伝導の相関が示唆され,四極子揺らぎを媒介とした超伝導対形成の可能性がある,現在,物性測定グループに試料を提供しており,微視的手法による物性解明が進められている。また,新たにPrRh_2Zn_<20>の単結晶を育成し,Γ_3二重項が結晶場基底状態であることを確認した。これまであまり明らかにされていない非磁性自由度に起因する多彩な物性を研究するのに,PrT_2Zn_<20>が最適な系であることを確立した。
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