Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本年度では、パイ中間子の2光子崩壊における遷移形状因子について、前年度に求めた格子QCDによる結果の詳しい解析を行った。具体的には、クォーク質量依存性をカイラル摂動論に基づいた関数形を仮定して、実際の格子計算と照らし合わせて、その関数形の妥当性を確認した。さらに、物理的なクォーク質量に外挿した結果から、π→γγの崩壊幅を求めた。この結果は実験値と比較してよく一致していた。ただし、実験値と格子QCDの結果共に誤差が大きいため、π→γγ遷移形状因子に含まれる、アイソスピン対称性の破れが明らかになるほどの精度は得られていない。格子QCDに含まれる誤差としては、クォーク質量に関する外挿による系統誤差が大半を占めている。この原因は格子サイズが小さいために、光子が持つ運動量が大きくなってしまうことにある。このため、カイラル摂動論の高次項による補正が必要になるが、本年度の研究ではこれらを厳密に取り入れる代わりに、ベクトル粒子が伝搬すると考える有効理論をもとにしているため、そのモデル依存性が入ってしまうためである。今後の課題として、これらの誤差を減らすためにより大きな格子サイズの計算に移行していくことが重要になる。この研究結果は、格子上でπ→γγの崩壊幅を求めることができただけでなく、質量殻外の光子への崩壊も正しく評価することが可能であることも同時に示した。このことは、ミュー粒子の異常磁気モーメントに含まれる光-光散乱振幅をπ→γγに分解したダイアグラムの非摂動的計算に応用可能であることを示す意義がある。
All 2010 2009
All Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 3 results) Presentation (2 results)
PHYSICAL REVIEW D 81
Pages: 34502-34502
PHYSICAL REVIEW D 79
Pages: 74510-74510
PHYSICAL REVIEW D 80
Pages: 34508-34508