Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
非溶媒と接触した高分子界面は濡れ性、選択透過性や生体適合性等といった機能性と密接に関連している。このため、非溶媒と接触した高分子鎖の凝集状態および熱運動特性の理解は重要であるが、これらをin-situで評価する手法が限定されているため、現状ではほとんど検討されていない。これまでに中性子反射率(NR)測定に基づき、非溶媒中におけるポリメタクリル酸メチル(PMMA)薄膜の凝集構造について検討してきた。その結果、高分子は非溶媒中においてさえも膨潤することを明らかにしている。NR測定は薄膜の深さ方向における組成分布を精密に評価可能であるが、現状では、測定に数時間から数十時間を必要とする。一方、可視光を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)および光導波路(GWM)反射率測定の場合、精度はNRに劣るが、測定に要する時間は数秒程度であるため、膜の凝集構造変化をin-situで追跡可能である。本年度は、SPRおよびGWM測定に基づき、メタノール中におけるPMMA膜の厚化挙動を追跡することで、非溶媒中における高分子膜の膨潤挙動を明らかにした。種々の時間メタノールと接触したPMMA膜のSPRおよびGWM反射率曲線は、接触時間の増加とともに共鳴角が高角度側にシフトし、また、共鳴角における反射率が減少した。詳細な解析の結果、メタノールと接触後、Case II拡散で記述出来る膨潤挙動が観測された。厚膜においては、一成分の拡散係数が得られ、その値はバルク値とほぼ同じであった。拡散係数は膜厚250nm以下の領域では減少し始めた。薄膜領域においては二成分の拡散係数が導出され、早い成分(D_<fast>)に関しては膜厚に依存しなかったが、遅い成分(D_<slow>)は膜厚に依存した。しかしながら、薄膜領域におけるD_<fast>およびD_<slow>はいずれもバルクと比較して著しく小さかった。基板との相互作用について検討した結果、D_<slow>は基板に依存して変化した。以上の結果から、薄膜領域におけるPMMA膜の膨潤挙動は、基板界面における分子鎖熱運動性が支配的であることが明らかになった。
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http://www.cstf.kyushu-u.ac.jp/~tanaka-lab/