Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本研究では、1または少数アミノ酸置換が引き起こす揺らぎを設計し、その効果を、BPTI-[5,55](58残基)とデングウイルス由来D蛋白質の第3ドメイン(E3D;96残基)などのモデル蛋白質を用いて実験的に調べることを目的とする。平成22年度では、BPTI-[5,55]の14番と38番の残基を中心とするトリプシン結合部位が座位するループ領域の主鎖構造の揺らぎがBPTI-[5,55]の安定性に及ぼす影響を調べた。そのため、14番と38番目の残基をそれぞれ、Gly,Ala,Valに置換した9種類の変異体と合わせて、14Gly38Ileと14Gly38Lysの合計11種類の変異体を発現・精製し、全変異体の熱安定性を円二色性分光法(CD)及び示差走査型熱量計(DSC)を用いてその熱力学パラメータを測定した。さらに、エンタルピー的に熱安定性が高かった5種類の変異体の立体構造をX線結晶構造解析法を用いて決定し、温度因子や主鎖の局所的な構造変形から揺らぎを評価した(座標はPDB登録済み)。また、実験技術において、少数アミノ酸置換した変異体の容易な結晶化法として、ヘテロシーディング法を立案し、その有効性を本研究で、初めて示したと考えている(ヘテロシーディング法:不安定な変異体の結晶化に安定な変異体を用いて作った結晶の核を用いる手法)。さらに、E3Dにおいても同様の実験を行い、デングウイルス3型及び4型由来の合計2種類のE3DのX線結晶構造を決定し、CDでその熱安定性を求めた(座標はPDB仮登録中)。本件において、今後は、各デングウイルス型におけるE3Dの熱安定性及び抗体認識部位の揺らぎが抗体結合力に及ぼす影響の詳細を解析する予定である。
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