Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
ヒストンやDNAのアセチル化やメチル化が転写誘導、細胞の発生、分化状態と強く相関していること、それらの遺伝情報は物理的実体を持つDNAに記録され、この情報の書き込み読み出しは、動的なヌクレオソーム構造形成、再構築により制御されていることが明らかになってきた。本研究では、ヌクレオソームコアの構成要素であるヒストンタンパク質とDNAの相互作用を分子動力学計算によって解析し、ヌクレオソーム構造形成の素反応の自由エネルギー地形を明らかにすることを目的として研究を進めた。ヌクレオソームを構成しているDNAは約150塩基対であることが知られているが、最近、リモデラータンパク質RSCを作用させたモノヌクレオソームの原子間力顕微鏡観察や電子顕微鏡像から、約180塩基対のDNAが巻きついた緩んだ状態があることが示されている。本研究では、そのような状態を計算機上で作り、ヌクレオソームの位置変化の自由エネルギー計算を行った。通常の平衡系分子動力学シミュレーションでは、大きな構造変化を追跡することは現実的に不可能である。そこで、ヌクレオソームを構成している任意の原子に任意の方向に外力を加えることができる計算コードを開発した。これと凸凹した自由エネルギー面を効率よくサンプリングするアルゴリズムとを組み合わせて、反応座標に沿って自由エネルギー計算を行った。結果、自由エネルギーへの寄与は静電相互作用が支配的で、マイナーグルーブとヒストンが好ましい相互作用をしている状態が準安定状態であることを見出した。また、計画班の胡桃坂らが近年、立体構造を決めたヒストンH3バリアント、H3Tを含むヒストンコアについて自由エネルギー計算を行った。結果、H3Tを含むヌクレオソームが不安定になる原因のひとつは、111番目のアミノ酸がバリンになることによって、H3TとH4が形成するH3T-H4テトラマーが大きく不安定になることにあることを示した。
All 2011 2010 2009
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (6 results)
Biophysical Journal 97
Pages: 1138-1147