Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
顔は、われわれヒトにとって相手の識別、他者の視線・意図等の認識を支える重要な社会的刺激である。ヒトは、このような顔に対し、その目鼻口の相対的な位置関係に鋭い感受性を持ち、何千もの顔を区別することが示されている。また、ヒトでは、顔に対するこういった全体処理の獲得は2段階に分かれていることが示唆されている。まず、3か月ごろに正立顔に特化した全体処理が獲得される。この段階では、どのような顔に対しても全体処理が適用される。その後、9か月ごろに顔に対する全体処理が、日常的に目にする対象に特化していく(知覚的狭小化)。ヒトの顔知覚様式の進化を考えるうえで、ヒトとヒト以外の霊長類種における顔知覚様式の異同を検討することが重要である。22年度は、サッチャー錯視に注目し、マカクザル乳児を対象に、彼らの顔知覚様式の発達的な変化を分析した。ヒトとニホンザルの顔写真を刺激に用い、通常顔に馴化させたのち、テスト刺激としてサッチャー顔化した刺激を呈示した。成体では、同種の顔に対してのみサッチャー錯視を知覚することが先行研究で報告されてきたが(Dahl et al., 2010)、興味深いことに、平均約70日齢の被験体群においては、ヒト・同種どちらの顔に対してもサッチャー錯視を知覚することが分かった。この結果は、発達初期においてはマカクザルも、異種正立顔に対してまで全体処理をおこなっていることを意味している。Dahlら(2010)と併せ考えると、彼らの全体処理獲得過程がヒト同様に2段階の過程を経ることを示唆している。また、22年度中はチンパンジーを被験体に、弁別訓練及びアイトラッキングを用いた実験を推進した。弁別訓練はまだ訓練途中であるが、アイトラッカーを用いた実験では、チンパンジーは同種についてのみサッチャー錯視を知覚することが示された。
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心理学評論
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Journal of Comparative Psychology (in press)
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http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/cicasp/adachi/index.html