Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
近年、大規模化し、飛来頻度も増加している黄砂による様々な健康影響に対する関心が高まっている。また、粒子状物質が循環器疾患の発症にも深くかかわることが報告されており、欧米と比較して脳卒中の罹患率が高い日本で、黄砂や粒子状物質の脳血管障害に対する影響を評価することは重要である。本研究では、日本における黄砂飛来の有無と脳梗塞発症リスクとの関連を検討することを目的とした。1999年6月から2009年3月に福岡脳卒中データベース研究(FSR)参加施設に入院した発症24時間以内の急性期脳梗塞連続6,352例を対象とした。黄砂飛来情報は、気象官署が発表する視程に基づくもの、ならびにライダー観測に基づくものによって評価するとともに、気温、相対湿度、浮遊粒子状物質濃度を調整して、黄砂飛来と脳梗塞発症との関連についてケースクロスオーバーデザイン法を用いて検討した。対象症例の平均年齢は72.3歳であり、40.8%が女性であった。脳梗塞病型はラクナ梗塞28%、アテローム血栓性脳梗塞23%、心原性脳塞栓症30%、分類不能例19%であった。この期間に黄砂イベントが観察された日数は134日であった。発症当日から3日前までの黄砂暴露によってアテローム血栓性脳梗塞の発症が有意に増加することが明らかになった。さらに、飲酒あるいは喫煙ありの群では、これらの習慣がない群に比して、アテローム血栓性脳梗塞の発症が有意に高かった。本研究によって、黄砂暴露によりアテローム血栓性脳梗塞発症の発症リスクが上昇することが明らかになった。また、患者属性の中で、飲酒あるいは喫煙の習慣が黄砂暴露によるアテローム血栓性脳梗塞の発症リスクを上昇させており、飲酒と喫煙は黄砂に対する感受性を高める可能性が示唆された。特に喫煙者は肺内の炎症反応が亢進していることが推測されており、黄砂エアロゾルの暴露による一連の炎症反応がより発生しやすい状況にあることが推測された。
All 2011
All Presentation (1 results)