Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
原子核物質の状態方程式は、中性子星の記述や宇宙における元素合成の理解のためにも非常に重要であるが、特に低密度領域での情報が不足している。質量数A= 4kの原子核におけるアルファ凝縮状態は低密度核物質の候補であり、その性質を理解すれば、通常の実験では得ることのできない状態方程式の低密度領域に対する情報を得られる。本研究では、20Ne 原子核に対してアルファ非弾性散乱と励起状態からの崩壊粒子の同時測定を行い、アルファ凝縮状態の確実な同定とその励起エネルギーやアルファ崩壊幅等の情報から低密度核物質の性質の解明を目指す。また、アルファ凝縮状態の候補となる励起状態のスピンとパリティに対しても情報を得る。
本研究では、0度を含む超前方角度でアルファ非弾性散乱を行い、励起状態から放出される低エネルギーのアルファ粒子との同時計測を行い、20Ne原子核のアルファ凝縮状態の候補を探索し、さらに、励起状態への遷移の微分断面積の角分布データを取得することで励起状態のスピンとパリティに関する情報を得ることを目指した。研究目標達成のための実験に必須となる装置であるガス標的とシリコン検出器についての実験条件を具体的に検討し、それぞれに必要不可欠な要素開発を推進した。ガス標的については、液体窒素温度で動作可能な極薄の真空封止膜として窒化シリコン薄膜の中でも特に円形の構造を持つ薄膜を利用した標的を考案した。この標的には窒化シリコン薄膜に合わせて特殊な合金でガスセルを製作する必要があり、その設計の考察を重ね、実現可能な設計を求めた。また、ガス標的用の隔壁システムは実際に設置を行い、到達真空度に対しての効果を確認するテストを実施した。シリコン検出器については、検出器の安定性のために当初想定していた構造から形状を変更した検出器の設計を企業と行い、必要となる追加の実機を準備した。この検出器の信号を確認するための電子回路を準備し、東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターにて実際の実験条件とほぼ等しい条件でのテストを行う準備が整った。また、形状の異なるシリコン検出器群を組み合わせて測定するための検出器架台の検討と設計を推進した。この構造は高統計でアルファ凝縮状態の同定を行うために必須である。上記のガス標的とシリコン検出器の準備を進めることで、本実験に向けて実験装置群の準備をほぼ完了させた。今後最終確認後に大阪大学核物理研究センターに実験装置群を移設し、20Neからのアルファ非弾性散乱と崩壊粒子の同時測定を行う。得られた実験結果は速やかに解析し、その結果を国内外の研究会等で発表し、学術論文を出版する。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2023 2022
All Presentation (6 results) (of which Int'l Joint Research: 4 results, Invited: 3 results)