Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本研究では、強結合状態であるクォークグルーオンプラズマ中にクラスター的相関が存在する可能性を、高エネルギー原子核実験における(反)チャームクォーク、(反)ボトムクォークという重いクォークの流れに注目することにより検証することを提案し、理論的に考究する。
量子色力学(QCD)の温度・バリオン数密度を変数とした相図上には、一次相転移が消失する臨界点が存在すると考えられている。この臨界点の探索を目的として、RHICにおいてはBEC、BEC II実験が行われ、さらに低エネルギー原子核衝突が世界の各所で計画されている。この臨界点の探索のためのプローブは様々なものが提案されているが、この研究ではチャームクォークという重クォークの臨界点近傍における振る舞いを通して、この臨界点を探る可能性を考察した。臨界点近傍において、チャームクォークに対する抵抗力(drag force)が変化すれば、その変化はチャームクォークがハドロン化して生成される軽重クォーク対であるオープンチャームメソンの楕円形揺らぎ(v2)の変化として観測されると考えられる。チャームクォークに対する抵抗力、あるいはチャームクォークの拡散係数の変化は、臨界点の近傍での動的臨界現象の表れとして考えることができる。ここで、チャームクォークに特有な事項として、チャームクォークは他の軽いクォークと同じ相互作用(QCD)に従うが、この臨界点は、カイラル対称性という、他の軽いクォークが持つ対称性についての臨界点である一方、チャームクォークはカイラル対称性を持たないということがある。つまり、チャームクォークは他のクォークと同じ対称性を持ちながら、この臨界点においては問題となる対称性を持たない不純物として振る舞うのである。このことを考慮に入れて、有効模型を構築して、臨界点近傍におけるチャームクォークの運動量拡散係数(drag forceとほぼ考えてよい)の振る舞いを求めた。その結果、この振る舞いは動的臨界現象のクラスに依存し、QCDが属するモデルHではほぼ臨界的な振る舞いは見られない一方、強磁性系などのモデルBでは臨界点で発散するということを見出した。モデルAでは臨界点での増大はない。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2023 2022 2021
All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (2 results)
Physical Review D
Volume: 106 Issue: 7 Pages: 1-12
10.1103/physrevd.106.074001
Volume: 105 Issue: 5 Pages: 1-18
10.1103/physrevd.105.054036