Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本研究では、J-PARCハドロン実験施設において有限密度媒質としての原子核を標的とした実験で電子陽電子対の不変質量分布を測定し、QCD相としての媒質を特徴づける量であるクォーク相関による二種類のクォーク凝縮量に対して実験的知見を与える。まずは、原子核中でのベクター中間子の質量分布とQCD和則の方法を用いることで、相構造を特徴づける対称性の一つであるカイラル対称性の秩序変数であるクォーク・反クォーク凝縮量の評価を行う。さらに、高密度領域において存在すると理論的に示唆されているクォーク・クォーク相関によりもたらされるカラー超伝導相の兆候を世界で初めてとらえることを目指す。
2022年度は既設のJ-PARC E16実験のデータ収集効率向上とスペクトロメータの低質量側アクセプタンスを広げるために飛跡検出器の連続読み出し回路の準備を進めた。E16スペクトロメータの2種類の飛跡検出器(シリコンストリップ、ガス電子増幅器GEM)のうち、最内層のシリコンストリップ飛跡検出器にはGSI-FAIRのCBM実験が開発した信号の発生時刻と波高を連続読み出し可能な高集積回路SMX2チップを適用するが、E16実験の運用に合わせるために、信号伝送距離延長回路・他の検出器と同期するためのトリガー情報やクロックを受信する回路・中継回路でデータ削減を行うFPGAファームウェアを開発した。GEM飛跡検出器のフロントエンド回路には高計数率での信号パイルアップによる性能低下を避けるために波形データを連続読出しできる集積回路が望ましく、LHC-ALICE実験のTPC検出器の読出し用に開発されたSAMPAチップを採用することにしたが、既存のSAMPAチップ搭載基板は基板サイズが大きくE16実験で運用することは困難であり、小型化が必要であったため新規に開発することにした。この基板はE16実験のGEM飛跡検出器読出し回路としてだけでなく国内の多くの原子核実験におけるTPC検出器の高速読出し回路としても使い易いように、SPADI Alliance(原子核実験における汎用高速高効率データ収集系の開発を目指している開発共同体)と協力して仕様検討と設計を進めた。これらの連続読出し回路は2023年度に試験運用開始予定である。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。