Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
主成分元素にパーセントオーダーの異種元素を添加する従来合金と異なり、3元素以上を等比に近い率にて混ぜ合わせた単相固溶体合金は、混合エントロピーが増大することから高エントロピー合金と呼ばれ、特異な物性が発現する。その原因機構として、原子レベルでは完全にランダムではなく、局所構造やクラスターの形成が示唆されている。そこで、金属中での原子クラスター化や結晶欠陥形成などの状態変化を鋭敏に反映しうる電気抵抗測定から、高エントロピー合金に内在する局所構造の解明や物性との相関について検証する。
ある元素をベースとして他元素を添加する従来の合金と異なり、等原子比で5元以上の元素を混合し化学的に乱雑で均質な結晶(固溶体)とした合金が注目を浴びている。例えばCrMnFeCoNi合金(カンター合金)では従来の合金を凌ぐ高強度と延性の両立が報告されており、配置エントロピーが高いことから高エントロピー合金と総称されている。しかしその一方で、カンター合金も冷間加工後に低温焼鈍すると相分離や析出物形成が起こることが報告されており、原子レベルでは特定の元素間で対形成・配列した規則構造が形成される可能性がある。そこで本研究では、カンター合金やその派生系であるCrCoNi合金やMnCoNi合金について、773K以下にて等時焼鈍することで特定の元素間で規則構造が形成されるかどうかを電気抵抗測定から評価した。ここで、電気抵抗はマクロな物性であるが、原子空孔形成などの原子レベルでの配列変化を鋭敏に反映することが可能である。測定したいずれの合金系でも低温になるほど焼鈍時間とともに電気抵抗値の大きな増大が見られ、また時間経過とともに飽和することが分かった。また飽和に至るまでの時間は焼鈍温度が高いほど短くなった。この電気抵抗の温度変化はアレニウス型で温度変化する緩和時間を用いた緩和機構で説明可能であった。詳しい解析から、最初乱雑状態であったものから規則構造が形成され、その量は温度により決まること、また電子顕微鏡やX線回折測定では明確な規則構造の形成が検出できないことから、特定の原子種間での対形成が起きていることが明らかになった。ここで、従来の合金理論では規則構造がある程度のサイズで形成されると強度上昇するとされているが、共同研究者による力学特性評価において電気抵抗値増大が飽和した状態でも明確に強度変化が見られなかったことも、規則構造形成ではなく特定元素間での対形成が生じていることを支持する。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2023 2022 2021
All Journal Article (3 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Peer Reviewed: 3 results, Open Access: 2 results) Presentation (6 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)
Acta Materialia
Volume: 243 Pages: 118537-118537
10.1016/j.actamat.2022.118537
Advanced Materials
Volume: 35 Issue: 3 Pages: 2207466-2207466
10.1002/adma.202207466
J. Alloys and Compounds
Volume: 896 Pages: 163059-163059
10.1016/j.jallcom.2021.163059