Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
現代日本においてうつ病は身近な精神疾患であるものの、その病態機序は十分に理解されていない。本研究ではうつ病に深く関わることが知られている内側前頭皮質と海馬の神経回路に着目して、階層縦断的、かつ種間横断的な研究を展開することでうつ病の病態メカニズムの解明を目指す。具体的には、海馬-内側前頭皮質路を構成する並列回路がストレス応答の制御にどのように関わり、その活動バランスの崩壊がどのようにうつ病発症に繋がるのかについて、齧歯類と霊長類の両種で調べる。
うつ病に深く関わる『内側前頭皮質(MFC)』は機能の異なる亜領域から構成される。このMFCの複雑性が、病態メカニズムの理解を困難にしている。本研究では、MFC亜領域が形成する神経回路を種間横断的に調べることで、システムレベルからうつ病の病態メカニズムの解明に迫る。本研究で特に注目していたのが、情動の制御やストレス応答に関わる『海馬-MFC路』、及び『MFC-扁桃体路』である。2021年度の研究から、海馬・扁桃体との結合パターンがMFCの亜領域ごとに異なることが明らかになった。2022年度はこの回路研究をさらに推し進め、海馬-MFC路の回路構成を経シナプストレーシング法を用いて調べた。これにより、MFC腹側部と背側部のニューロンが海馬の異なる部位からの入力を受けることをマウスで確認した。興味深いことに、海馬入力を受けるMFCニューロンのおよそ40%は抑制性細胞であった。抑制性細胞の割合が全MFCニューロンの10%程度であることから、海馬がMFCの抑制性細胞に選択的に入力していることが示唆された。この海馬のフィードフォワード抑制回路により、MFC腹側部/背側部の活動は制御されていると考えられる。また、昨年度に引き続き、MFCから扁桃体への投射をサルとマウスで調べた。その結果、両種においてMFC背側部(サルの前帯状皮質膝前部、マウスの前辺縁皮質)のⅡ層ニューロンが扁桃体基底外側核へ密に投射していることが明らかになった。このMFC Ⅱ層からの投射は背側部に特異的であり、MFC腹側部(サルの前帯状皮質膝下部、マウスの下辺縁皮質・背側脚皮質)では観察されなかった。この結果は、『MFC-扁桃体路』が哺乳類の進化を通して保存されており、齧歯類と霊長類で共通していることを示唆している。本研究で明らかにした種間共通のMFC回路情報は、うつ病の病態メカニズム解明に大いに貢献すると期待される。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2023 2022 2021 Other
All Int'l Joint Research (4 results) Journal Article (3 results) (of which Int'l Joint Research: 3 results, Peer Reviewed: 2 results, Open Access: 3 results) Presentation (10 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results) Remarks (5 results)
Cell Reports
Volume: 42 Issue: 1 Pages: 112001-112001
10.1016/j.celrep.2023.112001
bioRxiv
Volume: -
10.1101/2022.03.31.485431
Frontiers in Neural Circuits
Volume: 15 Pages: 790116-790116
10.3389/fncir.2021.790116
https://www.lifesci.tohoku.ac.jp/research/teacher/detail---id-9041.html
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2023/01/press20230125-01-rodents.html
https://www.tohoku.ac.jp/en/press/new_insights_into_how_brain_forms_and_stores_longterm_memory.html
https://www.lifesci.tohoku.ac.jp/date/research/detail---id-49938.html