Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本研究では、記憶によるストレス精神変調仮説を検証する。マウスに社会的敗北ストレスを負荷し、情動に関与する腹側海馬の神経活動を記録する。ストレス経験時に活動する腹側海馬の発火活動(符号化)、その後の同活動の再生(固定・想起)を神経活動レベルで記述し、さらにその後の行動成績の関連を比較する。多因子の相関解析やクラスター解析などを通じ、記憶に関連した神経活動から、ストレス応答の実態を説明する。このような検討を通じて、過剰なストレス記憶の想起を減らすことで、記憶を出発点とした精神不調の抑制できる可能性を検証する。
動物はストレス負荷を経験すると、不安様・うつ様症状など様々な精神変調を呈する。ストレス経験そのものは短時間でも、その影響が後にも継続することで症状の悪化をもたらすことがある。この生理現象に、海馬におけるストレス記憶の過剰な繰り返し再生が如何に関与するか解明を目指した。腹側海馬に32本の金属電極を設置し、動物により強い動物個体から攻撃を受けるような社会的敗北ストレスを負荷した。ストレス負荷前後での神経細胞の活動頻度を解析したところ、約2時間にわたって、特定の神経細胞集団の活動頻度が増加していた。また、海馬の同期活動の指標であるシャープウェーブリップル信号の頻度も増大することが確認された。こうした増加は、特に翌日以降に行った社会相互作用試験において、うつ様症状を強く呈した動物ほど顕著に見られた。また背側海馬で同様の検討を行ったところ、同様の結果は観察されなかった。次に、こうした腹側海馬の神経活動が、実際に精神破綻を生じるメカニズムの一端になるか因果関係を調べるために、オンラインフィードバック操作を確立して、シャープウェーブリップル信号の検出と同時に、海馬に電気刺激を加えて、同信号のみを時間選択的に消失させた。その結果、翌日以降に行った行動試験において、うつ様症状を示す動物の割合が有意に減少した。以上の結果は、ストレス負荷後の腹側海馬の神経活動が、精神症状の発現に重要であることを示唆するものである。一般的に、獲得した記憶をエンコードする神経細胞は、繰り返し再活性化されて記憶が固定されることが知られている。この記憶メカニズムは、本来、生存にとって大切であるが、負の記憶に対して過剰に働くことで、精神障害などを誘発する要因にもなるという新しい概念を提唱した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Frontiers in Behavioral Neuroscience
Volume: 15 Pages: 698753-698753
10.3389/fnbeh.2021.698753
STAR Protocols
Volume: 2 Issue: 2 Pages: 100572-100572
10.1016/j.xpro.2021.100572
http://www.pharm.tohoku.ac.jp/~yakuri/publication.html