Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
漆は古来、建物や食器などの塗料として、日本各地で使用されてきた。その歴史は縄文時代、少なくとも一万年以上前にさかのぼる。本研究では、ウルシという種がどこからやってきて、現在どのような進化を遂げているのか、危機に瀕する日本の漆産業を科学の力で少しでも助けることができないか、漆の過去、現在、未来に遺伝子からアプローチする。
ウルシのゲノムデータを基盤に、漆の過去、現在、未来を探る研究をおこなった。まずウルシゲノムシーケンスを完成させ、解析の基盤を整備した。計40本のコンティグに配列がまとまり、ほぼ染色体レベルのゲノム解読を達成した。遺伝子アノテーションの結果、26812個の遺伝子を同定できた。次にウルシの過去を知るため、国内のウルシ植栽地からのサンプルを解析した。前年度と比較し、GRAS-Di解析の規模(データ量)を大幅に拡大して解析の解像度を上げた結果、青森の集団が思いのほか他から離れていること、西日本の集団に意外な多様性があることがわかった。コロナ禍のなか、問題は国外サンプルの収集であったが、幸いなことに、中国各地や韓国の約200サンプルを国内の研究者から提供してもらうことができた。しかし、サンプルが20年近く常温保存されていたものであったため、DNAの劣化が進んでおり、最も重要な中国湖南省集団のサンプルは思うように解析できなかった。それでも、96サンプルのGRAS-Di解析を行った結果、ウルシは本当に中国から日本に伝わったのか、またもしそうだとすればどのような経路で伝わったのかを相当明確に示すデータが得られた(論文準備中)。また韓国のウルシは日本占領時代に持ち込まれたものではないかという説があるが、その正否も相当明瞭に判定することができた。最終班会議の3日前にデータが納品されるという綱渡りではあったが、最終的には最も大きな問題に決着をつけることができたと考えている。次に、ウルシの未来に貢献するため、ウルシの分子生物学的解析をおこなった。初年度、未分化の植物体の作成に成功したが、これに対し遺伝子導入とそれを利用したゲノム編集を試みた。しかし遺伝子操作後の組織の維持培養が難しく、残念ながら有望な結果は得られなかった。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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All Presentation (4 results) (of which Invited: 2 results) Remarks (1 results)
https://www.pu-hiroshima.ac.jp/p/hsuga