Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
都道府県を単位とするゲノム多型の地域差に関するデータベースを活用し、対立遺伝子頻度と難治性疾患の人口当たり患者数が強く相関する組合せを特定する。そして、相関のみられる対立遺伝子について、患者ゲノムの遺伝子タイピングにより疾患との関連の検証を試みる。特にHLA遺伝子群については、数種類の疾患を対象にタイピングを実施し、疾患との関連を解明する。以上によりヤポネシア人ゲノムの多様性とそこに働く自然淘汰圧の理解をめざす。
われわれは日本人ゲノムの地域差を解析し、HLA遺伝子群の都道府県単位での遺伝子頻度や、SNPアレイによる核ゲノム多型についてデータを整備してきた。本研究では、日本人ゲノム多型の地理的分布を手がかりとして疾患の原因解明を試みる研究を行った。網膜色素変性症(retinitis pigmentosa)は網膜の視細胞が変性・消失することにより視力の低下や失明に至る疾患で、指定難病である。事前の解析で、日本の47都道府県におけるHLA遺伝子頻度の分布と、人口10万人あたりの網膜色素変性症の患者数を比較したところ、HLA-DRB1遺伝子のDRB1*04:05対立遺伝子の頻度が患者数と正の相関を示した(r=0.536)。そこで、実際の網膜色素変性症患者のゲノムを解析し、関連が認められるかどうかを検証した。難病研究資源バンクから152名分の患者ゲノムDNAを取得し、HLAクラスI遺伝子のHLA-A, B, CとクラスII遺伝子のHLA-DRB1, DQB1, DPB1の合計6座位を対象とするタイピング実験を行った。その結果、健常人と患者群の間で頻度に差がある対立遺伝子が散見されたが、当初注目していたDRB1*04:05については患者群で頻度が低く、関連が認められなかった(OR=0.75)。一方で、疾患に関連する HLA 対立遺伝子の候補として、HLA-A*02:10(OR=3.70)とHLA-DQB1*06:09(OR=7.19)が新たに浮上した。このほか、HLA-B*15:07(OR=2.57)とHLA-DRB1*06:01(OR=1.34)は5%水準で有意に患者群で多く、HLA-A*26:01(OR=0.43)とHLA-DQB1*06:04(OR=0.37)は5%水準で有意に患者群で少なかった。以上の結果から地理的分布を手がかりとする疾患関連遺伝子の探索は困難と考えられたが、一方で、予想とは異なるHLA対立遺伝子との関連が認められた。網膜色素変性症には遺伝性もあるため、EYS遺伝子などの既知原因遺伝子のタイピング結果を解析した上で、結果を論文発表する。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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