Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
方言区画の多くは、東北方言、関東方言など、八地方区分のような行政区画と一致している。八地方区分は古代の行政区画である五畿七道と重なる部分があるが、南海道は、紀伊と四国という海に隔てられた地域が属しており、他が地理的に連続しているのとは異質である。南海道地域の結びつきが強かったことの反映だとすれば、南海道諸方言が言語学的に近縁である可能性がある。言語の系統は日本列島に日本語話者の広がった初期の軌跡を反映している可能性があり、言語学に基づく研究が、日本列島人の移動の歴史の解明に役立つと思われる。そのため本研究は、南海道地域の諸方言の系統関係の解明および言語的な観点に基づく南海道の歴史の追究を行う。
今年度は以下の1. ~ 4. の研究を行った。1. 現地調査。高知県南国市、高知市と兵庫県南あわじ市、洲本市、淡路市で実施した。2. 資料の電子データ化作業。アクセントの記載のある方言辞典を中心にExcelによるデータ入力作業と構造化を行った。3. 研究発表。単独あるいは共同で、南海道地域を含む日琉諸語(琉球を含む日本の諸言語)についての研究発表を6件行った。4. 論文・報告。単独あるいは共同で、南海道地域を含む日琉諸語についての論文・報告資料を3本公刊した。今年度の研究成果のうち、本研究課題の中心となるアクセントに関する研究は次の2つである。1. 現代方言のアクセント研究。高知方言のアクセント単位について、「文末詞gaによる無核化」という現象から考察を行った。高知方言は基本的に文節がアクセント単位になるものの、複合動詞や「名詞+コピュラ」では話者による違いが見られ、アクセント単位は文法的単位とは独立して規定しなければならないこと、高知方言では「文末詞gaによる無核化」によってその一部が定義可能であることを示した。また、京阪系アクセント(京都や大阪と同タイプのアクセント)の諸方言の式音調(アクセント単位全体に被さる音調の特徴)について広く調査し、高さ以外に方向(平進、上昇、下降)の特徴も重要であり、歴史的な変化を考える場合にもこれらを独立したパラメタとして扱うべきことを主張した。2. アクセントの歴史研究。琉球諸語を含む現代諸方言のアクセントをもとに、日琉祖語のアクセント体系を再建した。Tonogenesis(アクセント対立が新たに生じること)を仮定していないため、多くの型を祖語に立てた。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2023 2022 2021
All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results, Open Access: 2 results) Presentation (11 results) (of which Int'l Joint Research: 4 results, Invited: 1 results) Book (4 results)
信州大学人文科学論集
Volume: 10(2) Pages: 71-91
東京大学言語学論集 = Tokyo University linguistic papers (TULIP)
Volume: 43 Issue: TULIP Pages: 159-182
10.15083/0002002771
120007166764
https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/records/2002771