Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
和菓子の主役とも言えるアズキの栽培化起源は、日本だったかも知れない。本研究は、ゲノム解析によってその可能性を追求する。また、本研究ではダイズが日本で独自に栽培化されていた可能性についてもゲノム解析によって追求する。日本には独自のツルマメが分布しており、特に縄文遺跡周辺のツルマメ(野生ダイズ)には種子の大きなもの、種皮が緑色のもの、また蝋粉を失い種皮に艶のあるものなど、栽培ダイズに近い形質を有するものが散見される。中山(2015)はこれらの系統に縄文時代に日本で独自に成立した栽培ダイズの名残を見出しており、本研究ではこれらの全ゲノム配列を周辺のツルマメと比較することで中山の仮説を検証する。
本研究では、縄文時代の日本で栽培化が起きたと考えられるアズキについて、全ゲノム解析による遺伝学的な検証を行った。全ゲノムのSNPを用いた系統解析では、中国南部の栽培アズキが最も祖先的で、そこから日本の栽培型・野生型の両方が派生したかのような結果となった。しかし、交雑を考慮したAdmix graph解析を行うと、東南アジアの野生型から日本の野生型が派生し、そこから日本・中国北部の栽培型が派生、最後に中国の野生型と日本の栽培型との交雑によって中国南部の栽培型が生まれたとする結果が得られた。また、葉緑体のゲノム配列を使って系統樹を作成すると、世界中の全ての栽培型が日本の野生型とが同一の巨大クレードを形成した。これは、アズキが最初に日本列島で栽培化され、そこで収穫された種子が人類に運ばれることで栽培地を拡大していった経緯を示すものと考えられた。最後に、アズキの栽培起源地が日本列島のどのあたりになるのかを検証するため、日本国内の野生型と栽培型の遺伝距離を地域ごとに計算すると、北関東~東北南部で最小となり、考古学的な証拠と比較的近い結果となった。さらに、種皮色に関するGWAS解析の結果、第1染色体上のAntocyanidin Reductase 1(ANR1)におけるアミノ酸置換、および第4染色体上のProduction of Antocyanin Pigmentation (PAP1)の欠失を見出した。アズキの赤い種皮色はこれら遺伝子の機能欠損によると考えられた。以上から、アズキについては日本列島の単一起源であることがほぼ確実になった。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。