Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
人間の腎臓は約100万個(2つの腎臓で計200万個)のネフロンから構成されるが、病気や加齢によってその数が20万個を下回ると人工透析に移行するとされている。1つの腎胞から1つのネフロンが形成されるため、初期の腎胞の数によって、その人の生涯の腎機能が規定される。本研究では、その腎胞がどのようなシンギュラリティ機構によって発生するのかを突き止める。この研究は、ヒトの腎臓発生において、腎胞の数がどのように制御されているのかを理解することができるという点で生物学的意義が深い。本研究で得られる知見は、将来的に、腎臓オルガノイドのネフロン形成効率を人工的に制御する手法の開発にも繋がる。
昨年度までの研究で、カノニカルWntシグナルの直接の下流であるWNT4遺伝子の遺伝子座に赤色蛍光タンパク質をノックインしたWNT4-tdTomatoレポーターヒトiPS細胞株をCRISPER/Cas9システムを用いて樹立し、腎臓オルガノイド細胞塊のタイムラプス画像を撮像する環境を整えてきた。今年度はこの画像を元に、METイベントを将来起こすと予測される細胞塊をprospectiveに同定するアルゴリズム(tdTomato蛍光を発するより前に、光学的情報のみで予定細胞塊を推定する手法)を確立するために、機械学習を行った。その結果、Wntシグナル刺激によるMET誘導の開始2日以後に、AIによる予測確度が上昇してくることが分かった。この結果は、今後、教師データを増やすことでより早期にMETイベントを起こす細胞塊を予測可能になることを示す。また、細胞塊の大きさによってMETイベントの発生時期が異なる現象に関して、その原因を明らかにするために大小の細胞塊を用いてBulk RNA-seqを実施した。その結果、大きな細胞塊において、ネフロン前駆細胞の質を決める遺伝子の発現が上昇していることを認めた。更に、腎臓オルガノイド細胞塊のタイムラプス画像解析と並行して、経時的な1細胞RNA-seqを実施した。その結果、腎臓オルガノイドにおいて、ネフロン前駆細胞がMETを起こし腎胞が形成されるまでの遺伝子発現のダイナミクスを1細胞毎に検出することができた。更に解析によって、ネフロン前駆細胞の状態から既に細胞毎に遺伝子発現の不均一性が存在している事が分かった。これらの結果は、個々の細胞の不均一性に加え、細胞塊内部の環境、特にパラクライン因子が、リーダー細胞であるネフロン前駆細胞の特異性を担う因子である可能性を示唆している。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2023 2022 2021
All Journal Article (5 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results, Peer Reviewed: 4 results, Open Access: 4 results) Presentation (10 results) (of which Int'l Joint Research: 3 results, Invited: 5 results)
Developmental Biology
Volume: 498 Pages: 49-60
10.1016/j.ydbio.2023.03.006
Frontiers in Cell and Developmental Biology
Volume: 10
10.3389/fcell.2022.1105402
Current Opinion in Genetics & Development
Volume: 75 Pages: 101944-101944
10.1016/j.gde.2022.101944
eLife
Volume: 11
10.7554/elife.74263
医学のあゆみ
Volume: 276(6) Pages: 647-652