Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
ドナー・アクセプター分子は,有機薄膜太陽電池や人工光合成モデルといった光電変換材料に応用される。ドナー・アクセプター材料の設計において,電子供与体および電子受容体の選択が分子の性質に大きな影響を与えることは明白だが,ほとんどの電子受容体はπ共役系の分子である。本研究では,箱型分子であるキュバンが完全にフッ素化されたペルフルオロキュバンを電子受容体として用いた,新たなドナー・アクセプター分子を開拓する。この分子は,これまでの電子受容体の設計とは全く違う小さな三次元構造であるため,既存の系とは異なる特異な物性・パッキング構造を示し,ドナー・アクセプター材料の新たな可能性を拓くと期待される。
箱型分子であるキュバンが完全にフッ素化されたペルフルオロキュバンは,箱の内部に集合した低準位のシグマスター軌道に電子を受容すると予測されていたが,合成は達成されていなかった。申請者は科研費(若手研究)課題としてペルフルオロキュバンの合成に取り組み,世界で初めて合成に成功した。本研究では「ペルフルオロキュバンが電子受容体として働くか?」との問いから,ペルフルオロキュバンの電子受容性に関する研究をおこなった。具体的には,ペルフルオロキュバン・ヘプタフルオロキュバン・へキサフルオロキュバンとフッ素の数が異なるキュバン分子を合成し,これらについて電気化学的測定・吸光測定を行った。電気化学測定より,フッ素の数が増えるに従ってLUMOが低くなり電子受容性が上がることを確認した。吸光波長についてもフッ素の数が増えるとともに長波長にシフトし,低いLUMOの存在がサポートされた。さらに,ペルフルオロキュバンが受け取った電子の大部分がキュバン骨格内部に分布することを,低温マトリックス単離ESR法を用いて実験的に確かめた。ここまでの成果をまとめた論文はScience誌に掲載された(Science, 2022, 377, 756.)。研究実施計画においてはペルフルオロキュバンに芳香環を繋げて光学特性を調べることとしていたが,学術変革領域参画後のディスカッションを経て,まずはペルフルオロキュバンそれ自体の光学特性を調べることとし,計画を変更して実施した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2023 2022 Other
All Int'l Joint Research (1 results) Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (6 results) (of which Int'l Joint Research: 4 results, Invited: 5 results) Remarks (2 results)
Science
Volume: 377 Issue: 6607 Pages: 756-759
10.1126/science.abq0516
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/press/pr2022-08-17-001
https://www.chem-station.com/blog/2022/09/pfc.html