Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
宇宙には暗黒物質を呼ばれる正体不明の物質が存在する.この暗黒物質の謎を解明することは,現代の物理学・天文学に課された最重要課題の1つである.本研究では,暗黒物質の最有力候補の1つである,アクシオンを実験的に探索すべく開発・研究を行う.実験原理は,良電気伝導体の表面に磁場を印加し,その表面に誘起されたアクシオン起源の電磁波を集光し,高感度で測定するという手法であり,ターゲットとする質量は,理論的には最も好まれる領域に相当する,8~26 GHz(およそ0.3~1.1 ×10^-4 eV)である.
本研究は,超伝導体を磁場中に置いた場合,暗黒物質アクシオンが光子へと転換する強度が通常に比べて増強され,約10,000倍に達する可能性があるとの論文に基づいて研究が開始された.しかし,本研究で,その様な増強が無いと言う結論に達し,それを論文にまとめた(業績論文1).従って,本研究では,超伝導体に限定せず,広く暗黒物質アクシオンを探索することとした.通常の暗黒物質アクシオン探索では,共振空洞を利用した手法(Haloscope)が最も高感度で,本研究でもこの準備を進めている.その一方,アクシオン質量が大きくなると,Haloscopeは現実的で無い.代わりに,良導体の金属表面と平行に強力な磁場を印加し,金属表面からの信号を測定する手法(Dish Antenna)が考えられる.この手法では,磁場の印加された金属表面を広く取ることで,信号強度を増幅することができる.そこで本研究では,強力な永久磁石を並べ,その間にアルミニウムを設置した特殊な磁石(以後,マグネット板と呼ぶ)を開発した.磁石の間隔が広がると必要な磁場強度が低下し,間隔が密になると信号を発する金属の面積が減少する.このようなバランスの下,企業と協力し,最適となるマグネット板を設計,開発した.作成したマグネット板は,26ミリの磁石(両端は45ミリ)を20ミリの間隔で6個並べた構造で,磁石間の磁場の大きさは,約0.7 Tである.このマグネット板を京都大学のグループが行っている暗黒物質暗黒光子探索の装置に導入する櫓を構築した.この櫓は,マグネット板とゲイン較正に用いる液体窒素で冷却した黒体輻射源とを交互に測定できるように設計した.このマグネット板は,この他にも,遠赤外領域などでのアクシオン類似粒子(ALPs)の探索にも適用可能であり,今後このマグネット板を有効に利用し,広く暗黒物質粒子の研究に繋げることを検討している.
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2023 2022
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results, Open Access: 1 results) Presentation (5 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results, Invited: 2 results)
Physics Letters B
Volume: 827 Pages: 136950-136950
10.1016/j.physletb.2022.136950