Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
本研究では、高密度共役を実現する分子骨格として、環状π共役分子に着目する。すなわち、研究代表者が開発を進めてきた、π共役ユニットをcis-アルケンで二重架橋した環状分子、シクロファンに対する分子設計により、対面するπ共役ユニット間の面間距離が近接した、新しい環状π共役分子を創製することで、共役の高密度化を実現する。この高密度共役の本質の解明により、環状π共役分子における新しい電子共役の学理構築を目指す。
直交するπ電子系を融合すると、π共役のねじれが生じる。そのようなπ共役分子のトポロジーの変化は、新たな物性発現の可能性から興味深い。実際、メビウスの輪構造を持つπ共役分子の合成法として、直交するπ軌道を持つ二つのユニットを融合させることがすでに提案されているが、それを実現できたのはこれまで1例のみだけであった。一方で、環状構造を持つ、シクロパラフェニレン(CPP)は分子の面内から放射状に広がったπ軌道を持つことから、通常の平面構造を持つπ共役分子と融合することで、メビウスπ共役分子の一般性の高い合成法を開発できるのではと考えた。実際には、CPPを合成する中間体を用い、その分子にエチレンユニットやオルトフェニレンユニットを挿入することで、メビウストポロジーを持つCPP誘導体1および置換体2の合成に成功した。さらに1, 2はいずれも結晶状態においてパラフェニレンの回転が抑制されているため、メビウス構造を持つことが分かった。なお、1の溶液状態では、パラフェニレンの回転のためにメビウス構造が消失するが、2では溶液状態でも低温でメビウス構造を保っていることを明らかにした。また、比較のために、二つのエチレンユニットを導入した3も合成し、これが二重ねじれ構造を持つことも明らかにした。さらに、3では、対面するパラフェニレンの一部が、van der Waals半径の和より短い距離で近接しており、空間を介した共役(スルースペース共役)が発現しており、分子内空間におけるπ電子系の高密度化に適した骨格であることが分かった。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
本研究を進める上で鍵となる化合物の合成が順調に進んでいるため。
得られたシクロファン骨格をもとに、分子内空間におけるπ電子系の高密度化に適した分子設計を行う。
All 2022 2021
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results, Open Access: 1 results) Presentation (5 results)
JACS Au
Volume: 2 Issue: 8 Pages: 1857-1868
10.1021/jacsau.2c00194