Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
高血圧には、塩分の過剰摂取に加えて肥満やストレスなど様々な体内環境の変化が関わっており、共通して脳内において炎症反応が生じることが報告されている。近年、この脳内炎症が血圧上昇の原因である可能性が示唆されている。脳内の感覚性脳室周囲器官(sCVOs)は血液脳関門が欠損していながら神経細胞が存在しており、体内情報をモニターしている。我々はsCVOsに免疫細胞が常在しており、高血圧や肥満においては炎症反応が生じていることを確認した。そこで、この免疫細胞の活性化が血圧制御に関わっているのか検討する。脳内炎症と血圧制御の間に因果関係が判明すれば、原因不明の神経性高血圧症の治療法の開発が期待できる。
脳内で炎症が生じていることが本態性高血圧症の原因である可能性が示唆されている。そのメカニズムとして脳内の免疫細胞の賦活化が交感神経の慢性的な活性化に関係すると推定されるが、その詳細は不明である。脳の中でも例外的に血液-脳関門を欠いている感覚性脳室周囲器官(sCVOs)はNa+濃度やペプチドホルモンなどの液性因子に曝されており、その変化に応じて血圧などの生理機能を制御していると考えられる。我々は、sCVOsには脳内免疫細胞であるミクログリアが常在的に存在していることから、このミクログリアが体液中の炎症性サイトカインなどを感知し、血圧制御を司る神経細胞の活動を調節することによって血圧の制御を行っている、という仮説を立て検証を行った。肥満や塩分摂取、アンジオテンシンII(Ang II)の慢性投与など高血圧誘導条件下において、sCVOsのミクログリアにおいて活性化マーカーであるMHCIIの発現が有意に増加することを確認した。また、ミクログリアの活動を抑制するミノサイクリンの投与により血圧上昇が抑制されることが分かった。さらに、脳内のミクログリアを除去することによって血圧上昇が抑制された。ウイルスベクターを用いてミクログリアの活動を人為的に制御する手法を確立した。この手法によるsCVOsのミクログリアの活性化によって、一過性の血圧上昇が観察されたことから、sCVOsのミクログリアの活動が血圧制御に直接的に関与することが示唆された。活性化したミクログリアはTNF-αなどのサイトカインを介して神経細胞の活動を制御することが推定される。そこで、脳室内にTNF-αを投与したところ、有意な血圧上昇が認められた。また、sCVOsの血圧制御に関わる神経細胞において活性化マーカーであるFosの発現が増加していた。本研究により、sCVOsにおける新規の血圧制御機構の存在が示唆された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2021
All Presentation (1 results) (of which Invited: 1 results)