Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
安静時脳活動は脳の機能的バックボーンを表象している。実際、高機能自閉スペクトラム症(ASD)成人の症状およびIQは彼らの安静時神経遷移ダイナミクスが過度に安定しているためだ、ということも示唆されている。これをもとに本研究では「安静時神経遷移ダイナミクスを適度に不安定化させれば、ASDの臨界期を再開させ、中核症状を緩和させられるのではないか」という仮説を検証する。このために、独自の脳状態駆動型非侵襲的神経刺激法を拡張させ、安静時神経活動遷移ダイナミクスの制御法の確立を目指す。本研究が成功すれば、ASDの臨界期の再開を実現するための新たな方法が得られると期待される。
安静時においても脳はノイズ以上の活動をしており、この安静時脳活動は、脳の機能的バックボーンを示していると考えられている。我々は以前、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)によって記録されたヒトの安静時脳活動に注目することで、「高機能自閉スペクトラム症(ASD)成人の重症度と彼らの独特な認知機能は共に、彼らの全脳神経遷移ダイナミクスが過度に安定化していることと相関している」と いうことを明らかにした。しかしこれは相関でしかなかった。そこで本研究では、これが因果関係であるか否かを検証した。この目的のためにまず我々は、独自の脳状態駆動型非侵襲的神経刺激法(BDNS)を開発し、それを拡張させた。オリジナルのBDNSは課題実行中の脳活動への介入がその目標だったが、本研究ではほぼリアルタイムに 安静時脳活動のダイナミクスをコントロールすることを目指した。2021年には、定型発達被験者を対象にした研究結果をもとに、この脳状態駆動型非侵襲的神経刺激法の正確性や独自性を論文として発表した。この結果は国際総合科学雑誌に発表された(Watanabe, eLIfe, 2021)。さらにより高密度の脳波計を導入することでこの刺激法の空間分解能の向上を目指した。加えてその対象に自閉スペクトラム症当事者を含めた。そういった試みの結果、過度に安定化していたASDの安静時脳活動を不安定化させると、彼らの認知の硬直性が緩和されるということを明らかにした。加えて、認知の硬直性以外に、感覚の硬直性や、社会疎通性に関する非言語的情報の偏った処理も、これらの神経刺激によって変化することが判明した。これらの結果は現在投稿中の論文に記してある。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2023 2022 2021
All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 1 results, Open Access: 1 results) Presentation (2 results)
Folia Pharmacologica Japonica
Volume: 158 Issue: 2 Pages: 154-158
10.1254/fpj.22124
eLife
Volume: -
10.7554/elife.69079