Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
私たちの細胞がつくるタンパク質の約半数以上は複数のドメイン(タンパク質の構造の一部で他の部分とは独立した3次元構造をとる)からなる。試験管内の折り畳み実験ではこのようなタンパク質はドメイン間の相互作用によって凝集しやすい。しかし、細胞内ではこれらのタンパク質の多くは翻訳と共役して効率よく折り畳まれる。従って、その新生鎖上には、各ドメインの効率良い立体構造形成を促進するための、未同定の様々な仕組みが隠されていると予想される。本研究では、独自の実験系を駆使して、ヒト細胞表層タンパク質が細胞内で翻訳合成されつつ折り畳まれる仕組みを調べる。その解析から、新生鎖の配列中に隠された未知の仕組みを解明する。
LDL受容体(LDLR)は、悪玉コレステロールの消去に必要な膜タンパク質であり、ジスルフィド結合は7個のRドメインと3個のEGFドメインの各々に3本ずつ存在する。LDLRのようなマルチドメインタンパク質では、自身の立体構造形成を効率化させるため、その新生鎖中には様々な仕組みが隠されていると予想される。その実態の解明に取り組み、本年度は次の実績を得た。1) LDLRのN末端に存在するRドメインに導入された非天然型のジスルフィド結合は、その遥か下流に存在するβ-プロペラ領域の中央部分をリボソームが翻訳中に、正しい結合へと組み換えられる。LDLRの各ドメインのC末端に終止コドンをもつ変異体やβプロペラ中に作製した点変異体を使った解析から、βプロペラ中のKRK配列が、上流ドメインの効率良い折り畳みに必要であることが分かった。2) 折り畳みで生じるひっぱり力によって翻訳停止が解除され得ることから、翻訳停止とその解除を繰り返すことによって、タンパク質が効率よく折り畳まれる可能性がある。シグナル配列を欠くため折り畳まれないLDLR変異体をコントロールとして解析を進めたところ、翻訳後にシグナル配列に依存して小胞体へ輸送されるLDLRの存在が解析を困難にすることが判明した。昨年度に引き続き、様々な方法を試した結果、解析の障害になる後者の分子を効率よく除去する方法を開発することに成功した。3) ヒト細胞表層にはLDLRと類似のドメイン構造を持つタンパク質が多数存在する。LDLRに見られる折り畳み機構の普遍性を調べるため、本年度はVLDLRのcDNAをクローン化した。また、モノクローナル抗体の一つが、VLDLRを立体構造特異的に認識することを見出した。今後の解析に向けて大きな進展である。以上の他、翻訳途上のタンパク質にジスルフィド結合が形成される仕組みについてまとめ、「化学と生物」で報告した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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KAGAKU TO SEIBUTSU
Volume: 60 Issue: 11 Pages: 557-559
10.1271/kagakutoseibutsu.60.557
EMBO Journal
Volume: 6 Issue: 19
10.15252/embj.2021108482
https://www.lifesci.tohoku.ac.jp/research/teacher/detail---id-19734.html