Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
申請者らは酵母において、量の少ないtRNA種が呼吸条件下では軒並み発酵条件の2倍程度に増え、これによって翻訳におけるtRNA環境適合性指標が上昇する上位のタンパク質には、ミトコンドリアタンパク質や天然変性領域を持つ核膜孔タンパク質等が偏って分布することを見出した。こうした翻訳延長環境の変化が、各生育条件下でのタンパク質の量では無く、機能の質的な違い、すなわち、マルチファセット性を生む可能性について、本研究では酵母を用いて解析する。特に、こうしたタンパク質のオルガネラへの局在化や複合体形成の効率に多様性を与えるかに絞って検討を進める。
我々は酵母におけるtRNAレパートリーが生理条件でどう変化するかを、新規tRNA絶対定量法の開発などを通じて解析してきた。この中で、酵母では、発酵条件と呼吸条件とでは、後者に於いてminor tRNA全般が増加し、major tRNAが減少することを明らかにした。本計画ではtRNAレパートリーの制御が、翻訳環境を通じてタンパク質に多面性を与える可能性の検討を試みた。tRNAレパートリが個々のタンパク質の翻訳効率に与える影響は、tRNA adaptation index(tAI)で見積もられるが、発酵条件に比べて呼吸条件でtAIが上昇するタンパク質にはミトコンドリアタンパク質が多く見られる。今年度はミトコンドリア近傍で翻訳され翻訳に共役してミトコンドリアに取り込まれるタンパク質の翻訳状況をproximity specific ribosome profilingで解析する事を目指した。TOM膜透過装置に近接するミトコンドリア局在化シグナル受容体であるTom70にbirAを融合した場合、Om45との融合タンパク質に比べて、Avi-tag融合ribosomeタンパク質のbiotin化効率が非常に高く、適切なレベルのbiotin化条件の至適化が必要であった。残念ながら、酵母サンプルの調製には至ったものの、ribosome profilingまでは進めず、現在、継続して研究を進めている。他方、ミトコンドリア内膜のタンパク質膜透過装置TIM23複合体のサブユニットのうち呼吸条件下でtAIの上昇するTim17と変化しないTim50について、それらの安定性が発酵培地と呼吸培地で異ならないかをシクロヘキシミドチェイスで検討したが、両者とも基本的には両培養条件での安定性の違いを見いだせなかった。現在、継続して他のタンパク質の安定性や複合体形成に関しての解析を継続している。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2022
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (8 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results, Invited: 1 results)
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
Volume: 86 Issue: 10 Pages: 1398-1404
10.1093/bbb/zbac134