Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
葉緑体核様体は、通常は「固体」の球状構造をとるが、葉緑体分裂に先立って「液体」に変化して葉緑体全体に均等に拡散し、葉緑体分裂完了後、ふたたび「固体」に戻る。本研究では、葉緑体核様体の形態・分裂異常を示すHolliday junction 解離酵素の欠損株や、葉緑体型のDNA ligaseやSMCの解析を糸口とし、その細胞周期による制御機構を明らかにすることを目指す。
本研究では葉緑体核様体の球状構造の制御機構をDNA supercoilという観点から明らかにすることに成功した。葉緑体は、かつて独立した生を営んでいた藍色細菌の近縁種が真核生物の祖先に取り込まれ、共生関係を確立することで現在の姿になったと考えられている。その証拠の一つとして、葉緑体がもつ独自のゲノム(葉緑体ゲノム)の存在が挙げられる。葉緑体ゲノムには、光合成や葉緑体生合成に必須な遺伝子群がコードされており、その安定な遺伝は植物細胞における死活問題である。我々はこれまでに、葉緑体核様体が葉緑体分裂に先立って拡散し、分裂完了後速やかに球状構造を再構築することを明らかにした。これは、1つの葉緑体あたり80コピーある葉緑体DNAを、分裂前に拡散させることで娘葉緑体への均等分配を実現する戦略の顕れであると考えられた。一つの細胞のなかで、細胞核染色体は一旦染色体として纏められた後に娘細胞へと受け渡される。それに対し、まず葉緑体全体に拡散させてしまうという、全く異なる戦略で娘細胞への均等分配という共通のゴールを達成している点は興味深いが、その分子機構は明らかでなかった。本研究ではさらに、葉緑体DNAに一本鎖切断部位を蓄積する葉緑体DNA ligaseにおける葉緑体核様体の観察、Supercoilに選択的に結合するGapRタンパク質を応用することで、この葉緑体核様体の形態変化がDNA supercoilの制御に基づいていることを示した。さらに領域内共同研究の結果として、数理学的にもこのモデルが支持された。現在、この成果の論文を準備中である。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Proceedings of the National Academy of Sciences
Volume: 120 Issue: 29
10.1073/pnas.2305099120