Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
本研究では、クラゲ触手の枝分かれ形成過程におけるキチンの役割を明らかにするために、1)枝分かれ部位でのキチンの排除と、2)同部位に集積するクラゲ特異的多能性幹細胞:i-cellの細胞分化を介したキチン合成、という相反する2つの活性を時空間的に制御し、キチン層による空間的制約を構築しながら枝触手を形成するモデルを検証する。動物器官の枝分かれ機構として、これまでの知見が豊富な哺乳類等の体内分岐器官と比べて、外界と接するがために非細胞素材を纏うことになった器官の分岐形成が、どのような新しい原理に従い枝分かれするのか明らかにしたい。
ヒドロ虫綱に属するクラゲでは、ポリプや走根などの表面はクチクラ層で覆われていることが知られる。エダアシクラゲの触手は枝分かれするため、クチクラ層で覆われた触手が枝分かれするのであれば、細胞部分の枝分かれと同時にクチクラ層形成 vs. 分解の制御があるはずだと考えた。そこでキチンを可視化するFITC-WGAにより触手を蛍光観察したが、触手においてキチンを安定して可視化することはできなかった。また電子顕微鏡観察によってもキチン繊維が並ぶ層構造を確認することはできなかった。このことから、触手ではしっかりとしたキチン層は形成されず、触手枝分かれへの関与はあまりないと考えられた。一方で、走根においては、FITC-WGAによる蛍光観察により強い染色が安定して観察され、走根の周囲がキチン層で覆われていることが明らかになった。走根においても、ポリプの形成による枝分かれなどのため枝分かれが起こることから、これら枝分かれと同時にクチクラ層形成 vs. 分解の制御が起こっていると考えられる。走根枝分かれ時のキチン合成 vs. 分解制御を明らかにするために、まずはエダアシクラゲよりキチン合成酵素1種およびキチン分解酵素2種を単離し、in situ hybridizationにより走根での発現場所を調べた。その結果、キチン分解酵素の2種はいずれも、走根に沿って外胚葉層にパッチ上の発現をすることが明らかになった。しかしながら、発現細胞が集積して、キチンを分解し枝分かれをしていることを想起させるような部位は観察されなかった。また、走根においては、多能性幹細胞のマーカーであるNanos1の発現細胞も集積する様子は観察されなかったことから、走根における枝分かれは、多能性幹細胞が集積して枝触手をつくる触手枝分かれとは異なる仕組みで起こるかもしれないことが示唆された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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http://www.biology.tohoku.ac.jp/lab-www/asamushi/kumano_lab/index.html