「パルテノン神殿」工法と「中ぐり」加工による昆虫肢の「形」づくり
Publicly Offered Research
Project Area | Material properties determine body shapes and their constructions |
Project/Area Number |
21H05773
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Research Category |
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Transformative Research Areas, Section (III)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小嶋 徹也 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (80262153)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥11,960,000 (Direct Cost: ¥9,200,000、Indirect Cost: ¥2,760,000)
Fiscal Year 2022: ¥5,720,000 (Direct Cost: ¥4,400,000、Indirect Cost: ¥1,320,000)
Fiscal Year 2021: ¥6,240,000 (Direct Cost: ¥4,800,000、Indirect Cost: ¥1,440,000)
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Keywords | 付属肢 / 形づくり / ショウジョウバエ / 細胞ダイナミクス / 細胞外マトリックス / 昆虫肢 / パルテノン神殿様構造 / 中ぐり加工 / マクロファージ / 基底膜 / アポトーシス / オートファジー / ライブ・イメージング |
Outline of Research at the Start |
ショウジョウバエ付節の最終的な「形」は、幼虫期に各分節を形成する細胞が決定された後、蛹期に完成する。蛹期のごく初期にはずんぐりむっくりした形だったものが、非常にダイナミックな細胞動態により、付節の最終的な「形」が完成する。 本研究では、上記のそれぞれの過程での構造の詳細や形成メカニズムのクチクラや基底膜との関係を含めた解析や、それぞれの過程の役割の解析により、付節の最終的な「形」が完成するメカニズムを明らかにすることで、生物の「形」ができあがるメカニズムの理解を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ショウジョウバエ付節形成過程において、蛹期に起こる、「パルテノン神殿」様構造の形成や「中ぐり加工」による上皮細胞層の薄層化、マクロファージ様細胞による上皮細胞のトリミングなど、ダイナミックな細胞の挙動により最終的な「形」ができあがる過程について、ライブ・イメージングを駆使して解析することで、生物が最終的な「形」をつくるメカニズムに迫ることを目的としている。 本年度は、特に「パルテノン神殿」様構造について、その構造の詳細や形成メカニズム、役割を重点的に解析し、以下の結果を得た。 まず、ごく少数の細胞を標識できる系統により個々の細胞の形態を解析すると、個々の細胞は数本のプロセスを伸ばしており、隣接する細胞のプロセスが合わさって「パルテノン神殿」様構造の一つの“柱”を形成していた。この時、“柱”は、「パルテノン神殿」様構造の形成初期には遠位側に向いているが、解消する時期になると近位側に向きが変わった。fucci系統による細胞周期についての解析では、これまではこの時期には細胞分裂頻度は非常に低いとされていたが、実際には、主に将来の関節の遠位側である各分節の近位部で細胞分裂頻度が高かった。細胞増殖を制御するYkiの活性を変化させて全体的に細胞数を増やすと、「パルテノン神殿」様構造の解消過程が遅くなり、この時に分節の太さが野生型よりも著しく太くなった。また、基底膜構成タンパク質を標識できる系統を用いた解析では、「パルテノン神殿」様構造の形成に伴い基底膜構造が顕著に観察できるようになるが、その際、基底膜構成タンパク質は遠近軸に沿った線上の束となって局在していた。 これらのことから、個々の細胞が協調的に「パルテノン神殿」様構造を形成すること、その形成には基底膜でのテンションと密接な関係があること、さらに「パルテノン神殿」様構造は最終的な「形」とも密接に関係していることが想定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は特に「パルテノン神殿」様構造について、その構造の詳細や形成メカニズム、役割を重点的に解析することを目指した。「パルテノン神殿」様構造の中を行き来するマクロファージ様細胞の役割の解析については、蛹の発生自体が停止せずに肢でのみマクロファージをなくす系統の作成に苦労しており、あまり進めることができなかった。その一方で、「パルテノン神殿」様構造の構造やその際の基底膜との関係、最終的な「形」との関係については、興味深い現象がいくつも明らかとなり、より詳細な理解が深まってきており、これを踏まえたうえでの今後の方向性も明確になってきている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、これまでに明らかとなったことを踏まえ、「パルテノン神殿」様構造の形成と解消の過程における基底膜の形成や基底膜構成タンパク質の局在変化をさらに詳細に解析するとともに、それらの機能を阻害した場合の効果について解析することで、「パルテノン神殿」様構造と基底膜の関係をより明確にしたい。また、昨年度にできなかったマクロファージ様細胞の除去実験については、実験条件の算段がたってきているので、これによりマクロファージ様細胞の役割についても解析したい。さらに、「パルテノン神殿」様構造ができなくなるような実験条件を検討し、「パルテノン神殿」様構造ができない場合の最終的な「形」への影響を解析することで、「パルテノン神殿」様構造を形成する意味について、明らかにしたい。 「中ぐり」加工についても、本年度は解析を行う。まず、「中ぐり」加工が起こっているときに具体的に何が起こっているのかを、時間解像度を高めて詳細に観察する。この過程にはオートファジーが関与している可能性が考えられるので、オートファジーを起こした細胞を標識する系統を用いた観察や、オートファジーを阻害した場合の影響を解析することで、「中ぐり」加工とオートファジーとの関係についても解析する。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)