Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
多くの動物の基本骨格が左右相称である細胞基盤は明らかになっていない。生命の構成要素となる分子や細胞は、対となる鏡像体の一方に偏った「ホモキラリティ」を示すことが多い。本研究では、ホモキラルな要素が集合して、左右相称の骨格がスケールを積み上げて形成されるメカニズムを解明する。まず「細胞スケール」として、体の左右に由来する骨芽細胞などのキラリティを明らかにし、次に「組織スケール」として、骨芽細胞の集団が様々な骨を生み出したりする機構を解明する。最後に「個体形成スケール」として、神経系と脈管系が分子や細胞のホモキラリティを凌駕して、左右相称に組織を形態形成させるガイドとなるという作業仮説を検証する。
「からだ工務店」の公募班に参加して研究が大きく進展した。特に(1)数理解析の展開。右螺旋と左螺旋は鏡像であり重ね合わないためキラリティを持つ。数理科学者との交流により、螺旋様構造を扱うための「曲率」や「捩率(れいりつ)」を実際の実験データについて求めることができるようになった。すなわち、X線顕微鏡を用いたCT像などの画像データを用い、生体内のさまざまな微小組織構造について、右巻きか左巻きか、それ以外なのかを定量化できるようになった。(2)右手型細胞と左手型細胞の定義。細胞キラリティの研究における先駆的な論文を発表している海外のふたつのグループと交流することができ、より広い視野で右手型細胞と左手型細胞の定義を行うことができた。すなわち、我々の右手型細胞と左手型細胞の定義が、細胞内アクチン線維の渦巻の向きや、細胞集団の配列の方向性の両方に適用できるようになった。さらに実験に必要なマイクロパターニングの技術が向上した。(3)骨格の左右対称性が、ホモキラルな骨芽細胞により構築されているという仮説を検証するために着目すべき微細構造が見出された。すなわちマウスの左右の頭蓋骨と長管骨に、細胞集団スケールの螺旋様の構造をみつけることができた。今後、それらの螺旋の向きを解析することにより細胞キラリティに加え、「組織キラリティ」を定量的な解析対象とすることができる。これまでの成果を国際学会(Koichi Matsuo et al., Left-right asymmetry in calvarial mineralization by osteoblasts. The 75th Yamada Conference, January 24 to 27, 2023, Kobe)で発表した。また第 41回日本骨代謝学会学術集会(2023年7月27~29日、東京)でも発表予定である。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2023 2022 2021
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results, Open Access: 1 results) Presentation (2 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Invited: 1 results)
Frontiers in Cell and Developmental Biology
Volume: 9 Pages: 800455-800455
10.3389/fcell.2021.800455