Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
動物の体表を覆う細胞外基質(ECM)は、生体を守り、感覚受容・身体運動といった外界との相互作用を可能にするために、多様な構造をとる。しかし、細胞外に分泌された構成分子が構造化される仕組みは不明である。昆虫の外骨格形成は、約20nm厚の初期のECM構造-ナノ薄膜のパターンに従うと考えられる。本研究はショウジョウバエの嗅覚毛に着目し、「分泌された2種類の分子の相分離と自己集合の結果、嗅覚毛特有のナノ薄膜が生じる」という仮説をたてた。実験による仮説の検証と数理モデル化を通じて、ECM構成分子の自己組織化機構を解明することを目標とする。
生物の体表は、脱水や異物の侵入を防ぐ生体防御と、物質交換・感覚受容など外界との相互作用を両立する。哺乳類では死細胞を含む角質層、魚類では鱗と粘液、昆虫ではクチクラといったapical細胞外マトリクス(aECM) がこれに重要な役割を果たすが、その形態形成についてはほとんどわかっていない。なかでも昆虫クチクラは極めて多様で、ナノスケールの精緻な構造により、構造色や超撥水・親水性といった性質が付与される。このためバイオミメティクス(生物模倣技術)分野でも注目されている。ショウジョウバエの嗅覚毛クチクラは、30nm径の微細孔が多数あいた構造をとり、生体を守りつつ匂い分子の通過を可能にするフィルターとして機能する。形成初期のクチクラは、20nm厚の“ナノ薄膜”断片として現れる。ナノ薄膜は標準的には直線状だが、嗅覚毛でのみ曲率をもち、断片の間が後に成虫クチクラの微細孔となる。そこで本研究ではこのナノ薄膜の形成・パターニングがクチクラ形態形成の重要過程であると考え、機構の解明に取り組んだ。ナノ薄膜の形成期に発現が高いと考えられるaECM構成分子に着目し、遺伝子操作や電子顕微鏡による観察を行った結果、ナノ薄膜の形成・パターニングに関わる分子としてDusky-like(Dyl), Trynity(Tyn)をそれぞれ同定した。Dylは細胞膜近傍に薄いaECM層を、TynはDylの外側に厚いaECM層をそれぞれ形成する。ナノ薄膜は二層の間に位置することを示唆する結果を得ている。電子顕微鏡で観察されるが構成分子すら不明であったクチクラ初期のナノ薄膜について、重要なaECM構成分子二種類を同定し機能を調べることで、形成機構の一端を明らかにした。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2022
All Presentation (6 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results)