Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
本研究では,工芸,特に轆轤を用いて粘土を成形する陶工の技能を対象とし,工房の現場において計測を行い,モノを深く知る身体技法の特徴について記述することを通して,次の2つの問いについて明らかにすることを目指す.1.伝統的な工芸技能において,モノの物性や状態のダイナミックな変化に適応する「モノを知る」動きと,「モノに適う」技能は,いかにして個体において創発するのか?2. さらに,モノと接するところにしか姿を現すことのない,「モノを深く知る」身体知は,いかにして世代を超えて,個体間で伝達され得るのか?
本研究プロジェクトは,工芸の現場,特に轆轤を用いて粘土を成形する技能を対象として,モノの物性や状態のダイナミックな変化に適応する「モノを知るふるまい」の特徴を解明することを目的とするものである.この目的に向けて,本プロジェクトでは粘土という独特な素材を成形する技能がどのように他者とのあいだで共有されているのかを実験的に検討した.これまでの著者のグループの研究は伝統的な形態の形態発生プロセスが完成形に比べて多様なものであることを明らかにしてきたが,本プロジェクトでは伝統的な形態ではなく,ある未知の形態の人工物の形態が異なる文化圏の職人によって作られるときに,人工物の形態および形態発生のプロセスはランダムに変化を見せるのか,それともなんらかの方向性をもつのかという問題について定量的に検討した.実験の結果,伝統的なかたちではないのにもかかわらず,完成形に至る形態発生の経路およびその完成形は,職人内の変動量よりも職人間の変動量が大きく,また共同体内の変動量と共同体間の変動量もまた大きいという結果が得られた.このことは,非伝統的な未知の形態を成形する場面であっても,その成形プロセスや生産物には,システマティックな「個性」や「文化差」が現れるということを示唆している.また,モノを扱う手の動きについて検討したところ,観察された77の手の型のうち,18の型は3文化圏共通であり,その多くは最初の粘土を中央によせて開口するフェーズにおける手の型が占めていた.これらの結果は,未知の形態が受容される場面であっても,個々の履歴に根ざした質感知が形態発生のプロセスに独特のバイアスをもたらす一方で,あつかわれるモノの物性がもたらす共通する制約と機会が存在する可能性を示唆するものだった.
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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All Int'l Joint Research (5 results) Journal Article (4 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Peer Reviewed: 4 results) Presentation (11 results) (of which Int'l Joint Research: 7 results, Invited: 4 results) Book (4 results)
IEEE 6th international conference on soft robotics (RoboSoft)
Volume: -
Journal of the Japanese Society for Artificial Intelligence
Volume: 37 Issue: 6 Pages: 727-734
10.11517/jjsai.37.6_727
Behavioral and Brain Sciences
Volume: 45
10.1017/s0140525x22001261