Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
生物の細胞は多種類の生体分子からなる複雑なシステムで、多様な生命機能を実現している。しかし簡単な入出力応答であれば、シンプルな分子システムで実現できるはずである。『分子サイバネティクス』では、細長い突起を伸ばして他の細胞と連結することで情報をやりとりする人工神経細胞の実現を目指している。本研究では、生きた細胞の構造を支えるアクチン線維とゲノムサイズの長鎖DNAを封入した人工膜小胞をもちいて、数10マイクロメートルの膜突起を任意のタイミングで伸長短縮できるシンプルな分子システムの開発に挑戦する。
本研究の目的は『分子サイバネティクス』で実現を目指すミニマル脳の構成要素のひとつであるアクチュエータ・ニューロイドに、DNAによる形態制御機構を実装することである。具体的には、ナノ線維であるアクチン線維と長鎖DNAの相分離配向現象を利用して、人工膜小胞からの膜突起の伸長を制御する仕組みの開発に取り組んだ。本年度は統合班の浜田(東北大学)と共同で、Rolling Circle Amplification (RCA)法によるDNAの等温増幅によって共存するアクチン線維を相分離配向させる方法について検討した。RCA法は数10塩基程度の短い環状1本鎖の鋳型DNAを一定温度のまま長大な1本鎖に増幅できるため、アクチン線維との相分離配向が生じるのに必要な排除体積の増大を効率的に引き起こせると期待した。研究の結果、DNA人工膜小胞に封入する前のバルク溶液において、(1)DNAの等温増幅にともないDNAとアクチン線維が相分離配向すること、(2)鋳型DNAの配列やアクチン線維の平均長を変化させることによって相分離ドメインのサイズ形状に大きな違いが生じることを見出した。さらにこの反応液を人工膜小胞に封入することで、(3)DNAの等温増幅にともないアクチン線維が相分離配向してリング状の構造を形成する条件を明らかにした。また溶液条件の検討によりDNAの等温増幅に必要な時間を12時間から1時間以内に短縮することができた。本研究でもちいたRCA法によるDNAの等温増幅を、伝達班が開発を進める分子トランスデューサにより起動することで、DNA信号による人工膜小胞の形態制御機構開発の端緒を拓けると期待している。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2023 2022 2021
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results, Open Access: 1 results) Presentation (10 results)
Seibutsu Butsuri
Volume: 63 Issue: 1 Pages: 5-11
10.2142/biophys.63.5