量子スピンカゴメ格子の磁気転移と遅いゆらぎ
Publicly Offered Research
Project Area | Novel States of Matter Induced by Frustration |
Project/Area Number |
22014004
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Science and Engineering
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 誠 東京大学, 物性研究所, 助教 (40379475)
|
Project Period (FY) |
2010 – 2011
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
|
Budget Amount *help |
¥3,700,000 (Direct Cost: ¥3,700,000)
Fiscal Year 2011: ¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2010: ¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
|
Keywords | 磁性 / 磁気共鳴 / フラストレーション / 量子スピン系 / 強相関電子系 |
Research Abstract |
量子スピンカゴメ格子のモデル物質ボルボサイトCu_3V_2O_7(OH)_2・2H_2Oにおいて、強磁場中の詳細な核磁気共鳴(NMR)測定により、遅いゆらぎを伴った異常なスピンと、ほとんど通常の反強磁性状態にあると考えられるスピンの共存状態(Heterogeneous spin state)が測定限界の31 Tまで安定であることを見出した。また、通常の反強磁性的な状態にあるスピンが25 Tで強磁性偏極することを見出した。この部分的な強磁性偏極が、ボルボサイトで見られる特徴的な磁化ステップ現象の原因であることを明らかにした。低温強磁場の磁化およびNMRの結果が、一次元方向に交換相互作用を強くしたカゴメのモデルで定性的に理解できることを示した。これらの結果は量子スピンカゴメ格子の性質の理解を大きく進めるものである。さらに単結晶ボルボサイトのNMRも進め、ボルボサイトで見られる異常物性がクリーンな極限でも同様に観測される本質的なものであることを確認した。 また、より理想的なカゴメ格子のモデル物質であるベシニエイトBaCu_3V_2O_8(OH)_2の純良試料において詳細なNMR測定を行い、13Kから徐々にスピンの秩序化が生じ、9Kで明確な長距離磁気秩序を示すことを明らかにした。詳細なNMRの解析から、ベシニエイトの磁気構造がQ=0の120度構造に近いことを見出した。Q=0の120度構造はカゴメ格子にジャロシンスキー-守谷相互作用を加えた時に生じる磁気構造であることが理論的に指摘されている。よってこの実験結果は、ベシニエイトが実際に理想的なカゴメ格子であるものの、ジャロシンスキー-守谷相互作用のために長距離磁気秩序する系であることを示す結果である。これは理想的な量子スピンカゴメ格子の基底状態を正確に決定した初めての例であり、カゴメ格子の物理の理解を大きく進めるものである。
|
Report
(2 results)
Research Products
(6 results)