Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
本研究では、低障壁水素結合(LBHB)の存在が実証された光センサー蛋白質(Photoactive Yellow Protein, PYP)をモデル蛋白質として、蛋白質中でのLBHBの物理化学的特性を明らかにすることを目的とし実施してきた。本年度は、(1)LBHBの結合エネルギーの評価を行い、(2)LBHBの形成条件について検証した。(1)LBHBを通常の水素結合に変換した変異体(E46Q)を作製し、X線並びに中性子併用結晶構造解析によって変異効果を検証した。変異に伴い、LBHBに近接する短距離水素結合(pCA-Y42)の水素結合長が、2.52Aから2.48Aまで短くなっているものの、pCA-Y42間の水素原子はY42と共有結合しており、イオン性水素結合が保持されていることが確認できた。これらの水素結合の変化を除き、他の領域では、顕著な構造変化を示さなかったことを踏まえ、野生型 (LBHB)、E46Q (HB)及びE46A (水素結合なし)に対して酸滴定を行い、LBHBの結合自由エネルギー(6.9 kcal/mol)は、HB (4.4kcal/mol)の約1.5倍程度であることを明らかにした。(2)(1)の結果から、短距離イオン性水素結合(pCAごY42)が、低障壁水素結合形成に作用していることが示唆された。検証のためpCA-Y42間の水素結合を解消した変異体(Y42F)の構造解析を行ったところ、置換に伴い、pCA-Y/F42のC_ξ原子間距離が3.24Aから3.29Aに増加すると同時に、pCA-E46間の水素結合長は2.56Aから2.63Aまで増加することがわかった。この結果は、置換に伴い、pCA-E46間の低障壁水素結合が通常の水素結合に転換したことを示している。以上の結果から、pCA-E46間の低障壁水素結合が形成に際する、pCA-Y42間のイオン性水素結合による幾何学的制限の重要性を示している。
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10026244827