Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
肥満により癌の発症率が有意に上昇するが、その分子メカニズムの詳細については十分には明らかにはなっていない。我々は、新生仔マウスに0.5%DNBAを塗布する全身性発癌実験において、高脂肪食摂取群では、100%の個体で肝癌を発症することを見出した。我々が開発したp16^<INK4a>やp21^<waf1/Cip1>遺伝子の発現をイメージングするマウスに同様の実験を行うと、肝癌部で発光が認められた。詳細を解析すると肝癌部の活性化stellate細胞においてp16やp21の発現上昇が認められ、stellate細胞において細胞老化が生じていると考えられた。近年、細胞老化を起こすと、炎症性サイトカインを分泌することが報告され、その現象はSASP(senescence associated secre-tory phenotype)と呼ばれている。本研究ではSASPが肝癌形成に関与するかどうか検討した。この高脂肪食摂取実験系における肝癌組織でのstellate細胞において、細胞老化にともなう炎症性サイトカインが発現しているかどうか、免疫組織染色にて検討したところ、肝癌組織のstellate細胞で細胞老化を誘導するDNAダメージのマーカー(53BP1,γ-H2AX)が染色され、さらに炎症性サイトカインであるIL6やGro-α(ヒトのIL8ホモログ)の発現も認められた。DMBA塗布によりRas遺伝子に活性化型変異が入るため、Rasシグナルを調べたところ、肝癌組織のstellate細胞でリン酸化ERKが認められ、Rasが活性化していることが明らかになり、stellate細胞で活性化型Rasによる細胞老化が生じていると考えられた。さらに肝癌組織では脂肪滴の蓄積が著しく、脂肪滴周囲では過酸化脂質を示すアクロレインが染色され、ROSレベルも上昇していることが示された。代表的なSASP因子であるIL6のKOマウスにおいて同様の実験を行うと腫瘍の数が60%程度まで抑制され、この系においてはSASPが肝癌形成に重要な役割を担っていると考えられた。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
細胞周期制御因子の生体における機能を明らかにすることが、本特定領域研究の目的のひとつである。本研究では高脂肪食に伴う肝癌促進系で、CDKインヒビターであるp16やp21の発現が肝腫瘍組織のstellate細胞で上昇し、細胞老化、さらにはSASPを誘導していることが明らかになり、領域の目的にも貢献できたと考える。
本研究で用いた高脂肪食摂取による肝癌促進の実験系において、マウスに抗生剤を投与し、腸内細菌を除去すると、肝癌形成が抑制されるという、予備データを得ている。今後は、なぜ腸内細菌を除去すると肝癌形成が抑制されるのか、腸内細菌のプロファイル解析やメタボローム解析を通して、そのメカニズムを明らかにしていく予定である。
All 2012 2011 2010
All Journal Article (4 results) (of which Peer Reviewed: 3 results) Presentation (2 results) Book (1 results)
Molecular Cell
Volume: Vol 45 Pages: 123-131
Experimental Dermatology
Volume: (in press)
実験医学
Volume: vol.29 Pages: 85-91
Cancer Research
Volume: 70 Pages: 9381-9390