Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
多細胞生物においては、単に、その構成細胞の分裂増殖を促進するだけでなく、発生段階、または状況に御応じて構成細胞の増殖を安定的に停止させることが生命維持にとって必須事項となっている。この安定的な増殖停止の1つとして、細胞老化が知られている。細胞老化は細胞周期の休止期(GO期)に見られるような一時的な増殖停止状態とは異なり、もはやいかなる増殖刺激を与えても細胞分裂を再開できない不可逆的な増殖停止状態である。細胞老化は、古くから癌抑制機構として機能していると考えられてきた。しかし、細胞老化を起こしても、細胞が死滅するわけではないので、老化細胞が生体内に長期間生存し続けることが予想される。このため、この増殖停止の不可逆性が細胞老化が癌抑制機構として働くための必須条件になっていると考えられる。我々は昨年度までに細胞老化の不可逆性を規定するメカニズムの一つとして、DNAダメージ応答によるDNA methyltransferase 1(DNMT1)の分解と、それに伴うヒストン3リジン9のジメチル化(H3K9me2)レベルの低下を見出していた。これらの研究成果を踏まえ、本年度では細胞老化で起こるDNMT1の分解機構の解明と、それによって引き起こされるH3K9me2レベルの低下に関するメカニズムの解明を試み以下の研究結果を得た。1.細胞老化を誘導するDNAダメージはユビキチンリガーゼとして知られるAPC/C-Cdh1を活性化することで、DMTIのポリユビキチン化とそれに伴うプロテアソーム依存的な蛋白質分解を引き起こすことを見出した。2.DNMT1の分解はDNAダメージシグナルを更に増強させることでAPC/C-Cdh1の活性を更に高める。このため、通常は基質になりえないH3K9のメチル化酵素であるG9a及びGLPのポリユビキチン化が起こり、G9a/GLPの蛋白質分解及び、それに伴うH3K9me2レベルの低下が起きることを明らかにした。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
当初目標としていた、細胞老化に伴うDNMT1の分解を引き起こすユビキチンリガーゼの同定に成功し、細胞老化の不可逆性を規定するエピジェネティックな制御機構の主要メカニズムの一つを明らかにすることが出来たため。
今回同定したエピジェネティックな制御機構によって発現が調節される遺伝子群を同定し、細胞老化に伴う不可逆的増殖停止機構の詳細を解明することを目指す。また、今回我々が見出したエピジェネティックな制御機構がどのようにして破綻することで発癌が起こるのかについても解明を試みたいと考えている。
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Molecular Cell
Volume: 45 Issue: 1 Pages: 123-131
10.1016/j.molcel.2011.10.018
International Journal of Oral Science
Volume: 4 Pages: 200-208
Oncogene
Volume: 30 Pages: 737-750
Cancer Research
Volume: 70 Pages: 9381-990
http://www.jfcr.or.jp/tci/canbio/index.html